ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

52 高知論叢 第113号 大手資本の地域インパクトまず明らかになった点は,大手資本進出に伴う地域インパクトの大きさである。コンビニ業界は,大店法の規制回避と流通近代化の波に乗りながら,フランチャイズ契約に基づく店舗の増殖を通じて集積なき集中を急速に進め,「コンビニの時代」と称されるほどの勢いを見せてきた。しかし,1990年代以降の業界成熟化に伴い,二重の意味で業界再編が生じている。その1つが,業界内部での階層分解ならびにチェーン同士の統合・提携に基づく大手3社への寡占化の進行であり,もう1つが,大都市部から低密度地域への店舗エリアの外延的拡大である。特に四国は,業界トップのセブン-イレブンに象徴されるように,大手資本にとっての最後の草刈り場として注目されるようになっていった。中でもこうしたターゲット地域の代表例が,高知県である。県内でも,1980年代より地場スーパーや中堅・中小のボランタリー・チェーン,さらに単独の中小小売店による地場コンビニが登場し,その後も縮小する食品小売業の中では数少ない成長業態として,地域商業構造においてプレゼンスを拡大してきた。しかし,立地場所は高知市およびその周辺に偏在するとともに,大手資本の進出に伴う2度の「コンビニ戦争」の結果,かつては主流の地場コンビニが姿を消し,他地域と変わらない画一的な大手チェーンの独壇場と化していった。加えて,注目すべきは,最新の「コンビニ戦争」を背景に,地場スーパーまでもが大手コンビニ資本に翻弄され,提携を図っていった点である。サンシャインにおけるセブン-イレブンへの包摂と受動的適応,サンプラザにおけるファミリーマートとの折衷型店舗開発と選択的適応,サニーマートにおけるローソンとの共同運営と戦略的適応という形で,提携内容や裁量のレベルには差がみられるものの,いずれもコンビニ業界最大手の進出と小売業界の厳しい経営環境を背景に,大手コンビニ資本と提携に踏み切らざるをえなかったという点では共通している。これにより,今後,大手コンビニ資本は,地盤の弱い県内でシェア拡大のテコを図る一方,地場スーパーは,コンビニと提携して小商圏を確保することで,高齢化や買い物弱者のニーズをカバーできるようになるのかもしれない。しかし,コンビニ・フランチャイズの特性上,《コンビニ-地場スーパー連合》の主導権はあくまでコンビニ資本側にあり,地場スーパーの特