ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

コンビニエンスストアの全国浸透と地域経済 53性を生かしたコンビニ事業には至らない可能性が高い。加えて,店舗に陳列される商品の大半は,県外の工場・配送センターから送り込まれる以上,店舗が増えて売上が伸びても,関連利益は域外へ流出し,結局は店舗の地代・テナント料とオーナー・非正規雇用者の低報酬ぐらいしか地域には残されないだろう。 コンビニ拡大の構造的限界一方,地場スーパーを巻き込んだ大手資本の市場包摂が進むにつれて,コンビニ拡大はもはや構造的に限界に到達しているという問題も浮かび上がってきた。そもそも高知市内では,人口比でみた店舗密度の点からも,オーナーの現場感覚からも,コンビニはすでに飽和状態である。しかも,可住地面積の少ない地域特性ゆえに,出店ポイントも限定されることから,今後は過当競争の中で限られた土地をめぐる争奪戦が繰り広げられるとともに,高密度エリアでの集中出店によって,小さな市場をめぐる店舗同士の消耗戦が一層進行することが予想される。加えて,パート・アルバイトの労働力不足も深刻化している81。コンビニの9割がパート・アルバイトの非正規労働に依存しているが,その賃金水準はどの店舗もせいぜい最低賃金レベルにすぎない。コンビニの店内業務は質量ともに増大しているが,仕事内容に比べて低報酬との落差が激しいため,特に若者はコンビニでの仕事を敬遠する傾向が強まってきているのである。最近は派遣会社の利用も検討されているが,人件費負担が高まるため,有望な選択肢とはなっていない。したがって,今では店舗内労働力の高齢化が進行しているのである。とりわけ深刻なのが,深夜勤務であり,いくら募集をかけても枯渇状態に陥る等,どの店舗も24時間営業の維持が危機に瀕している。残された選択肢は,時給の引き上げであるが,コンビニ会計に規定されてオーナーの可処分所81 大手コンビニの増加がもたらす労働市場への影響は,コンビニ業界だけにとどまらない。例えば,県内の弁当チェーン・くいしんぼ如月が,深夜の人手不足から,設立以来35年間続いた24時間営業に幕を下ろした例が挙げられる。「睡眠時間をください くいしんぼ如月 県内全店 35年間続いた24時間を返上」『高知新聞』2016年4月21日付。