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概要

高知論叢

54 高知論叢 第113号得を必然的に圧迫するため,オーナーにとっては最も敬遠したい選択肢である。したがって,このような労働力不足の中で,オーナー家族の限界的な労働負担が強まっている。オーナーの多くは,家庭生活を犠牲にしながら,年中無休の長時間過重労働を強いられており,高齢のオーナーの中には過労でダウンしたために,経営自体が危ぶまれるケースも生じている。また,こうした過重労働問題については,上記コンビニ事業に参入した地場スーパーも変わりはない。最初の段階では本業の人員を割いて出向させてきたものの,現場での労働力不足を背景に出向社員が深夜勤務に入る等,労働法に規定されるスーパー勤務とコンビニ特有の24時間勤務との矛盾に直面している。また,店舗拡大とともに今後は出向人数を増員せざるを得ず,本業との調整が大きな課題となってきている。にもかかわらず,本部の指揮権貫徹を背景に,オーナーの間では報われない徒労感が広がっており,それがコンビニ・イメージの社会的悪化につながっている。オーナーは,いずれのチェーンでも,本部によって仕入価格や営業時間等が決められ,フランチャイズの画一性ゆえにオーナーの自由裁量はせいぜいカウンターフーズの販売や人件費・廃棄ロス削減等の限られた範囲にすぎない。また,仮に懸命に働いて売上を上昇させても,本部から課せられた高率のロイヤルティと仕入増に伴う高コストによって,かえって可処分所得が目減りすることもあり,コンビニ会計を踏まえて微妙なバランスをとらなければならない。さらに,過去のスリーエフやローソン,ファミリーマートのくら替えが示すように,加盟店には事前通告なしに一方的な商号変更を通告され,同じエリア内で同一チェーン同士が競合するケースすら生じている。つまり,本部は店舗経営を専制的に取り仕切ることで利益を肥大化させる一方,オーナーは経営者というよりも本部の指揮下で働く実質的労働者として経営自立性から疎外されているのである。そして,こうしたコンビニ・フランチャイズの高リスク・低リターン構造が,コンビニのイメージを悪化させるとともに,最近ではオーナー募集をかけても集まらず,本部の出店拡大に支障が生まれる原因になっているわけである。今のところ本部側では,オーナーの年齢上限の引き上げ・撤廃や