ブックタイトル高知論叢

ページ
58/148

このページは 高知論叢 の電子ブックに掲載されている58ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

高知論叢

56 高知論叢 第113号ルづくりである。現在,コンビニ業界の関連法として,中小小売商業振興法と独占禁止法が存在し,2002年には公正取引委員会より「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法の考え方について」というガイドラインが公表されたものの,いずれも上記の問題に十分対応しきれていない。こうした限界から,支援団体や法学者からは,コンビニを含むフランチャイズ業界を対象とする「フランチャイズ規制法」導入運動がすでに提唱されており,2009年の民主党への政権交代時に成立の機運が高まった経緯がある。このフランチャイズ規制法案は,加盟店とそこで働く従業員の保護を目指したものであり,具体的には,①契約前情報開示・事前開示書類の登録制,会計透明化,非合理な契約更新拒絶禁止や,②近隣出店規制,③加盟者の団結権・団体交渉権等が盛り込まれている83。かつて「スーパーの時代」に大店法が成立したように,「コンビニの時代」にふさわしい法的枠組が求められているのである。フランチャイズ関連法は,海外でも先行事例が存在しており,それらを参考に業態法を成立させることが,オーナーの地位向上の前提条件となるであろう84。第2に,コンビニの出店規制・誘導への地域イニシアティブを通じた,コンビニの地域への「埋め込み」である。本論文では,最後のフロンティアである高知でもすでに飽和状態であることを明らかにしてきたが,このままコンビニ83 本間重紀編,前掲書,第4章・資料編,北野弘久「『フランチャイズ規制法要綱』の発表」『法律時報』第82巻第3号,2010年3月,フランチャイズ法研究会「フランチャイズ規制法要綱」前掲『法律時報』等を参照。84 フランチャイズ法の先行例として,韓国の動きが注目される。韓国では,1980年代末からコンビニブームが始まり,1990年代のIMF 危機後の受け皿として急速に拡大した結果、急速に社会問題化するようになった。そこで,2002年に「加盟事業公正化法」が制定され,その後幾度か改正されている(松尾和彦・林秀弥「韓国『加盟本部と加盟事業者間の取引の適正化に関する法律』について  韓国フランチャイズ法研究序説  」『名古屋大学法政論集』第251号,2013年)。特に,2014年2月の改正施行法では,経済民主化関連法の一環として,加盟本部の不公正取引行為を根絶し,零細加盟店主の権益保護を目指すもので,深夜時間の営業強要規制や店舗環境の改善,中途解約時の過重な違約金規制,同一業種加盟店の近隣出店禁止,加盟時の予想売上額の書面提出義務等が盛り込まれた(「‘コンビニ終夜営業’来年2月からはせずとも良いことに」『ハンギョレ新聞』2013年10月9日付)。その後, 同法の実効性が問われる状況も指摘されているが(「コンビニ 深夜営業は無理にしなくてもかまわないといったのに…実際は‘絵に描いた餅’」『ハンギョレ新聞』2014年6月30日付),日本のコンビニ業界発展に対応した加盟店保護の観点からも,十分検討に値するといえよう。