ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

4 高知論叢 第113号者の多くが「本部と加盟店との共存共栄」10というスローガンに基づく流通近代化,後者は非対称な力関係に基づく「現代版奴隷契約」11という評価に二分されている。そこで,本稿では,本部主導によるフランチャイズ・チェーン展開と加盟店オーナーの本部従属性を考慮しつつ,本部による加盟店支配とそれに基づく労働成果の独占を,前者の後者に対する「指揮権」という観点から経済学的に把握し,独自のオーナー調査を基に,大手資本の出店拡大に伴うオーナーへのインパクトを具体的に明らかにしたい12。第2に,個々のコンビニ店舗経営を取り巻く地域経済構造への着目である。コンビニと地域との関係については,主に地理学の分野で研究が進められてきた。そこでは,人口・交通・土地利用と企業の出店戦略とをクロスさせながら,急速に拡大するコンビニの詳細な立地展開に光を当てるのが大きな特徴である13。こうしたアプローチは,コンビニと地域特性との関係の解明については有益な視点を提供するものの,分析の主眼は店舗の立地動向にあるため,コンビニ経営を規定する本部-オーナー関係や小売業内部での競合,店舗内労働を左右する地域労働市場等,コンビニを取り巻く地域経済構造までは分析が及んでいない。とりわけ,大手資本が掌握しきれていない未開拓地域の場合,地場のスーパー資本のエリア・フランチャイズ店舗や単独店等の「地場コンビニ」が広範に存在するケースが多い。果たして大手コンビニ資本の進出は,地場コンビニにどのような影響を及ぼしているだろうか。また,出店拡大に伴い,地10 「セブン- イレブン店舗の経営をされる加盟者の成功がセブン- イレブン本部の成長の源でありますので,セブン- イレブン本部の経営努力は加盟店の経営支援が中心となります。この意味で,加盟店とセブン- イレブン本部は共存共栄の関係にあると言えます」(セブン- イレブン・ジャパン『セブン- イレブン フランチャイズ(C タイプ)契約の要点と概説』2016年7月1日,2頁)。11 本間重紀編,前掲書,7頁,290頁。12 「指揮権」概念については,尾崎芳治『経済学と歴史変革』青木書店,1990年から示唆を得ている。13 土屋純「コンビニエンス・チェーンの発展と全国的普及過程に関する一考察」『経済地理学年報』第46号,2000年,荒木俊之「コンビニエンスストアと都市空間」荒井良雄・箸本健二編『日本の流通と都市空間』古今書院,2004年,同「コンビニエンスストアにおける『多様化』」『地理』第56巻第2号,2011年。また,高知市内の立地動向については,松山侑樹・遠藤尚・中村努「高知県高知市におけるコンビニエンスストアの立地展開の特異性」『E-journal GEO』第11巻第1号,2016年が,詳細な分析をしている。