ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

コンビニエンスストアの全国浸透と地域経済 5域の流通業界や労働市場にはどのような変化をもたらしているのだろうか。そこで,本稿では,第2の視角として,地場スーパー調査を基に,大手コンビニ進出に伴う地場スーパーや労働力等の域内経済主体の動向に注目しつつ,分析を進めたい。本稿の構成は,以下のとおりである。まず,Ⅰ章では,小売業界におけるコンビニ業界の成長と近年の動向,ならびに大手コンビニ資本の最近の事業戦略を概観する。次に,Ⅱ章では,大手資本未開拓地域の1つである高知県を素材に,同地域におけるコンビニの位置関係およびコンビニ業界の歴史的形成過程をフォローする。その上で,Ⅲ章では,最新局面であるセブン- イレブンの進出に焦点を当て,大手資本の狙いと地域に与える影響を,セブン- イレブン,地場スーパー資本,個別オーナーへのヒアリング調査を通じて明らかにする14。最後に,コンビニの全国浸透が未開拓地域に与えるインパクトについて総括し,今後の政策課題を提示する予定である。Ⅰ コンビニ業界の形成と大手資本の事業戦略1. コンビニ業界の歴史的展開まず,小売業におけるコンビニの位置関係と大手コンビニ資本の事業戦略を概観しておこう。米国発祥のコンビニが日本で登場したのは,1969年に大阪で誕生したマイショップ豊中店が嚆矢といわれるが,本格的な出店ラッシュは1970年代以降である。当時,コンビニ経営に着目したのは,食品問屋・メーカーと大手スーパーであり,前者では橘高(K マート),いずみフードチェーン(ココストア),丸ヨ西尾(セイコーマート)の各社が1971年に,山崎製パン(サンエブリー,後のデイリーヤマザキ)が1977年に出店を開始する一方,後者では1973年に西友(実験店舗,1978年にファミリーマートとして開店)ならびにイトーヨーカドー14 なお本調査は,筆者を代表とする市民グループ・高知県食健連(食糧と健康,地域を守る高知県連絡会)のプロジェクト調査に基づくものである。筆者以外の調査メンバーは,中岡健太,牧耕生,中越吉正,小泉美恵,松尾浩子,恒石祐一,島内寿代である。