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概要

高知論叢

70 高知論叢 第113号「医療事故・調査支援センター」とは,同法第6 条の15によれば,「医療事故調査を行うこと及び医療事故が発生した病院等の管理者が行う医療事故調査への支援を行うことにより医療の安全の確保に資することを目的とする一般社団法人又は一般財団法人」とされている。前述した遺族等への事情説明と医療事故調査・支援センターへの事故の報告に続く事故調査手続の流れ46は,以下の通りである。病院等の管理者は医療事故調査を行うために必要な支援を医師会や学会などに求める(同法第6 条の11第1 項)。従って,医療事故調査は単独調査ではない。その上で,医療事故の原因を明らかにするために必要な院内調査を行う。これを医療事故調査という(同条第1 項)。医療事故調査が終了した後は,あらかじめ遺族等に結果を説明する(同条第5 項)とともに,遅滞なく,調査の結果を医療事故調査・支援センターに報告しなければならない(同条第4 項)。調査結果の報告を受けた医療事故調査・支援センターは,収集した情報の整理及び分析を行い(同法第6 条の16第1 項),病院等の管理者に分析結果の報告を行う(同条第2 項)ほか,病院等の管理者又は遺族等からの依頼に応じて医療事故調査・支援センターによる調査を行うことができる(同法第6 条の17)。2 医療事故調査制度と刑事責任この医療事故調査制度に対して主に法律家から批判されている点の一つが,事故調査が行政手続や刑事手続から独立していて,刑事手続をも含めた司法手続に引き継ぐ仕組みのない点47である。医療の場で判断される過失が司法の場で判断される過失にどのように作用するのかが不明で,医療の安全のためのリスクコントロールに役立つのかという問題提起といえようか。このような議論の前提には,事故の原因を究明して対策を講ずることと特に刑事司法が介入することとの関係をどう捉えるかについての見解の対立があ46 石川寛俊「医療事故調査制度について」比較法研究センター「医療と法」ネットワーク編『法律家と医師が解明する 動き出す医療事故調査制度』(サイカス,2015年)7 頁以下等を参照。47 川出敏裕「事故調査」法学教室第395号(2013年)41頁,42頁等を参照。