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概要

高知論叢

76 高知論叢 第113号して,それぞれ「苦痛除去のための臨死介助」6「9 治療中断による臨死介助」70の語を用いる見解もある。ところで,近年,主として「治療行為の中止」を論じるにあたって,これを「終末期医療」の問題として捉える見解71もみられる。厚生労働省が,2007年「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」72を公表したのをはじめ,いくつかのガイドラインにおいても「終末期医療」の語が使用されている。「終末期医療」の問題は,上述した刑法理論上,「尊厳死」の問題のひとつ,あるいは「消極的安楽死,不作為による安楽死」の問題として議論されてきたものであると捉えることはできようが,それらの関係は必ずしも明確ではなく,そもそも「終末期」という概念自体が曖昧である等の指摘73もされている。2 終末期医療をめぐる法の現在状況オランダでは,1973年の「ポストマ事件」を契機に安楽死合法化への議論が進み,2001年4 月「安楽死法」が成立し,2002年4 月から施行されている74。ベルギーでは,2002年5 月「安楽死法」が成立し,同年9 月から施行されている。フランスでは,2005年「病者の権利および生命の末期に関する法律」が制定されており,本法が「尊厳死法」として扱われているという75。69 浅田和茂『刑法総論[補正版]』(成文堂,2007年)213頁以下参照。70 浅田・前掲注(69)215頁以下参照。71 甲斐克則「治療行為の中止  川崎協同病院事件」甲斐克則=手嶋豊編『別冊ジュリスト 医事法判例百選[第2 版]』(2014年)198頁以下等参照。72 厚生労働省ウェブページhttp://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0521-11a.pdf(2017年1 月31日確認)73 「終末期」の定義の変遷につき,加藤尚武「終末期医療のガイドライン  日本医師会のとりまとめた諸報告書の比較検討」飯田亘之=甲斐克則編『終末期医療と生命倫理』(太陽出版,2008年)120頁以下。なお,大内尉義「末期医療の事前指示と延命医療」樋口範雄編著『ジュリスト増刊 ケース・スタディ 生命倫理と法』(2004年)80頁以下,宮崎真由「終末期医療」久々湊晴夫=旗手俊彦編『はじめての医事法 第2 版』(成文堂,2011年)117頁以下も参照。74 オランダの最近の動向につき,ペーター・J・P・タック/甲斐克則=礒原理子訳「人生の完成と安楽死」『刑事法ジャーナル』第50号(2016年)71頁以下。75 諸外国の動向を紹介するものとして,飯田亘之=甲斐克則編『終末期医療と生命倫理』(太陽出版,2008年),甲斐克則編訳『海外の安楽死・自殺幇助と法』(慶應義塾大学出版会,2015年)等。