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概要

高知論叢

「医療と刑事法」に関する一考察 77他方,日本では,2004年に北海道立羽幌病院で,医師が患者の人工呼吸器を取り外して死亡させた疑いで北海道警による捜査が行われていることが報道され,2006年には,富山県射水市民病院で,医師が人工呼吸器の取り外しにより複数の患者を死亡させた疑いで富山県警による捜査が行われていることが報道された。これらの事件では,いずれも,行為を行ったとされる医師は書類送検されたが,その後不起訴となっている。さらに,後述する川崎協同病院事件においては,2002年に医師が逮捕,起訴され,殺人罪に問われた。医師による人工呼吸器取り外し事件が,立て続けに顕在化したことを受けて,厚生労働省は,2006年「終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会」を設置し,翌年2007年5 月に「終末期医療の決定プロセスのあり方に関するガイドライン」76を公表した。その他,終末期医療に関するガイドラインとして,2007年日本救急医学会「救急医療における終末期医療に関する提言(ガイドライン)」77,2008年日本医師会第Ⅹ次生命倫理懇談会「終末期医療に関するガイドラインについて」78等が公表されている。特に最近では,尊厳死の法制化をめぐって,超党派の議員連盟による法案提出の動きもみられたが,反対論も根強く,見送られたまま現在に至っており,これらガイドラインと法律制定の関係についても,検討の必要があろう。3 安楽死をめぐる刑事裁判安楽死については,ⅰ名古屋高裁判決79が,リーディングケースとされている。ⅰにおいて,名古屋高裁は,傍論で,安楽死が違法性を阻却する要件として,次の6 要件を挙げた。(1)病者が現代医学の知識と技術からみて不治の76 前掲注(72)。77 日本救急医学会ウェブページhttp://www.jaam.jp/html/info/info-20071116.pdf(2017年1 月31日確認)78 日本医師会ウェブページhttp://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20080227_1.pdf(2017年1 月31日確認)79 名古屋高判昭和37年12月12日高刑集15巻9 号674頁。