ブックタイトル高知論叢

ページ
8/148

このページは 高知論叢 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

高知論叢

6 高知論叢 第113号(ヨークセブン,後のセブン-イレブン),1975年にはダイエー(ローソン)が参入を果たしていった。1980年には,ユニー(サークルK),ジャスコ(ミニストップ),長崎屋(サンクス)の各社が相次いでコンビニ業界に進出し,この時点で現在の大手チェーンの顔ぶれがほぼ出揃う形となった。1970年代にコンビニ・チェーンが相次いで誕生する背景には,スーパーの急成長に伴う社会的波紋がまず挙げられる。セルフサービスという販売面での革新をもたらしたスーパー各社は,店舗のチェーン化や大規模化,商品多角化等を推し進めた結果,1972年にはダイエーが百貨店最大手の三越を売上高で追い抜き,小売業界で主導権を握るようになった。しかし,百貨店から主役の座を奪ったスーパーの急成長は,中小小売業者にとっては大きな脅威であり,両者の摩擦が表面化するようになった。そこで,1973年には,旧来の第二次百貨店法に代わってスーパーの出店規制を盛り込んだ大規模小売店舗法(大店法)が新たに制定された。さらに,1979年には大店法が改正され,500㎡超の店舗にまで規制の網が広げられた。つまり,スーパー資本のコンビニ進出は,大店法の相次ぐ規制を回避するとともに,新たな成長可能性を切り開く手段と捉えられたのである15。また,問屋資本や食品メーカーの場合,スーパーの拡大に伴う中間流通業者の排除や中小小売店の経営悪化への対応策として,チェーン化を通じて小売店を包摂することにより,取引先を確保する狙いがあった16。もう1つの背景として,政府の流通政策も無視できない。当時の中小企業庁は,「今後の中小企業の歩む道」という研究会を組織して中小小売業の近代化を検討し,スケールメリットを通じた経営力・競争力の強化ならびに流通コスト低減による流通近代化の観点から,ボランタリー・チェーンとフランチャイズ・チェーンを積極的に評価していた。その一環として,コンビニについても「消費者に近く,また家族経営を中心とする中小小売店,とくに小規模小売店に向いており,経営の非効率性を脱皮するうえでもひとつの有力な手段である」15 南方建明「コンビニエンスストアの成長による食品小売市場の変化」『大阪商業大学論集』第5 巻第4号,2010年,16-17頁。16 矢作敏行,前掲書,186-191頁,金,前掲書,19-23頁。