ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

87 報告被災地域における地域共生拠点と地域づくり   東日本地域における取り組みを事例として   田  中  き よ む  霜  田  博  史  はじめに中山間地域の限界集落の孤立化は,地理的条件と少子高齢化,過疎化や地域経済の衰退,市町村合併,災害などの諸要因が重なるなかで起こることが考えられるが,要介護高齢者や障害者,児童などの個々の要援護者の孤立化は,そのような地域条件を基盤にしつつも,コミュニティ活動の担い手の不足,住民が集まり交流する拠点や機会の不足,移動問題による住民間の疎遠化,世代間交流の不足や家族との疎遠化,見守り活動の制約などの条件下で起こることが考えられる。本研究では,中山間地域における限界集落の地域的な孤立化,および,それを基盤とする要援護者の個人的な孤立化の構造と,それをふまえた地域支援・個別支援モデルを構築することを目的とする研究の一環として,東日本被災地域の取り組みを対象とする(注1)。地域の孤立化と個人の孤立化は,津波などの地震被災地域において最も先鋭な形で表れると言えるが,同時に,住民同士の共生型居場所づくりを契機とする地域づくりが,それらを防止・解消して地域復興に向けた突破口ともなり得る可能性がある。本稿では,3年前の調査時点からの状況変化をふまえ(注2),とくに,被災後の地域共生拠点を軸とする地域づくりの方法と可能性を探ることを目的とする。R. パットナムは,コミュニティの崩壊と再生を明らかにする鍵概念として高知論叢(社会科学)第113号 2017年3 月