ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

コンビニエンスストアの全国浸透と地域経済 7と位置付けられた17。同時期には,中小企業庁の委託による『コンビニエンス・ストア・マニュアル』が発行されるとともに,中小小売業の近代化を促進するための中小小売商業振興法も制定される等,中小小売業の近代化促進という視点からコンビニ経営が推奨されていったのである18。こうして,小商圏において小規模ながらも幅広い品揃えを擁し,長時間営業とセルフサービス方式を基調とするコンビニは,スーパーの出店規制と流通近代化政策を背景に,消費者のライフスタイルの変化に適応しながら急速に店舗を増やしていった19。それと並行して,1980年代以降は,ベンダーを巻き込んだ弁当・おにぎりをはじめとするオリジナル商品の開発や,公共料金の収納代行ならびに金融サービス等のサービス業務の強化,POS 等の情報システムの導入,小口発注に対応した多頻度配送等の物流網の整備も進められ,経営の一層の多角化・高度化が展開された20。では,現在はどのような地点に到達しているのだろうか。図1は,近年のコンビニの店舗数と総販売額の推移を示したものである。店舗数は2006年に4 万店,2013年に5 万店を上回り,1998~2015年の間に1.7倍の増加を見せた。総販売額も,全体の3分の2を占める食品類(ファストフード〔FF〕や日配食品,加工食品)に食品以外の物品とサービスの売上も加わり,2014年には10兆円台の規模に達した。飲食料品に限定すれば,小売業界の総販売額45兆円に対してコンビニの販売額は7兆円と,スーパーの9兆円(総販売額の21%)に次ぐスケール(同,15.5%)である21。中でも,業界最大手のセブン- イレブンに注目すると,1994年に親会社のイトーヨーカ堂の経常利益を,2001年にはダイエーの売上高を越えるだけでなく,1991年には本家・米国のサウスランド社を買収し,2005年に完全子会社化する等,「スーパーの時代」から「コンビニの時代」17 中小企業庁『1973年版中小企業白書』1973年,261頁。18 通商産業省企業局・中小企業庁監修,流通経済研究所編『コンビニエンス・ストア・マニュアル』流通経済研究所,1972年。当時のコンビニの目的として,消費者の本質への対応,小規模店の近代化,労働力不足への対応の3点が挙げられていた(同上書,1-7頁)。19 こうしたコンビニ特有の展開を,セブン- イレブンの鈴木敏文元会長は「変化対応業」と称している。木下安司『コンビニエンスストアの知識』日経文庫,2002年,167頁。20 南方,前掲論文,17-25頁,金,前掲書,26-31頁。21 経済産業省『商業動態統計調査』時系列データより算出。