ブックタイトル高知論叢

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概要

高知論叢

88 高知論叢 第113号「社会関係資本(social capital)」を提示したが(注3),日本社会の限界集落における地域再生の方向,維持可能な社会づくりのあり方としては,世代や障害の有無を超えた共生型拠点づくりとそこを軸とする人間関係の意識的な再形成に活路が見出せるのではないかと考えられる。平野隆之ら(注4)が指摘する共生ケアにおける多様な人間関係の積極面は,小規模・過疎化地域においてこそ集合メリットが付加され,家族的な関係性を地域の中で再生し,かつ多機能化することで新たなコミュニティの発生をもたらすという方向でも発展しうると考えられる。そして,そのような可能性は,東日本で津波などの過酷な地震被害を経験した東日本地域における取り組みにも見出され得る。以下では,福島県,宮城県,岩手県の東日本大震災(2011年3月11日)被災地域における共生型居場所づくりに取り組んでいる団体に主な焦点を合わせ,そこでの聴き取り調査結果をふまえ,地域共生拠点を軸とする地域づくりの可能性を探ることを目的とする。(1)福島県楢葉町における取り組み① いわき市における避難生活福島県楢葉町は東日本地震による原発事故の影響もあり,役場も含めて町外に避難したが,役場の避難先であるいわき市には,県内8町村が避難していた。楢葉町役場は,避難時は,いわき市内の私立大学(いわき明星大学)の施設を役場としても使用していたが,現在は完全に楢葉町に戻っている。避難していた時期には,たとえば,楢葉町の介護保険事業計画は,いわき市における楢葉町介護保険事業計画という特別な位置づけがされていた。現在も(視察時),避難者の半分程度が仮設住宅に住んでいるが,仮設の保育所・小学校・中学校はピーク時の10分の1 程度の児童・生徒数になっている(一学年10福島県いわき市(いわき明星大学)2016. 3. 29