ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

kouchirouso_114_20180329

4 高知論叢 第114号請求は,認められるべきでないと判断した5』。そこで会社は,控訴した。二審The Courts of Appeal(Lindley, Bowen andA. L. Smith L.JJ.)は,本件における当該契約は,有効であると判示した。そして,被告に対して,差止命令,損害賠償額の査定,訴訟費用の支払いを命じた6。そこで,トシテンは,上告をした。終審である貴族院(Lord Herschell L.C.,Lord Watson, Lord Ashbourne, Lord Macnaghten, Lord Morris)は,1894年7 月31日,全員一致で,当該制限特約は,有効であると判決した。判決では,合理性について次のように示された。『予が考える今日の正当なる見解は,次のとおりである。公共の利益は,すべての人々が営業するに当り自由に営業することにある。個人の利益も又同様である。営業に関する個人の行動の自由に対するあらゆる干渉,各個人自身のなかでの営業制限すべては,特段の事情がなければ,公序に反するものであり,それゆえに無効である。これは一般原則である。しかし例外がある。個人の行動の自由に対する営業制限および干渉は,特定の事件のもつ格別の諸事情により,正当化されうるのである。制限が合理的である場合,十分正当化されうる。否それどころか,それは,唯一の正当化なのである。   合理性,その合理性というものは,関係当事者の利益に関して,および,公共の利益の点で合理的であること,制限が課される当事者に有益となるように適当な保護を与える程度で作られ注意されており,それと同時に公共の利益にも少しも害を与えないものである。思うに,それは,積み重ねられてきた従来の先例の正当なる結果である。ただし,その結果は,突然に達成されたとは,考えられないのである7』。5 [1893] 1 Ch. D. 630, 638.6 [1893] 1 Ch. D. 630, 651. 砂田氏は,『損害を賠償し』(前掲砂田『イギリス消費者法研究』p. 12)としているが,損害賠償査定額の命令である。イギリスでは,具体的な賠償金額は,別個に審理する。なお,“L. J.” とは,Lord Justice の略である。控訴裁判所裁判官を指す。また訴訟が活発か否かにつき,訴え提起の際,請求額を確定しなければならない国もある。通常,損害賠償額がいくらなのか素人にはわかるはずなく,又,訴訟費用が高額になること,これらのことが裁判を受ける権利を阻害しているのである。7 [1894] A. C. 535, 565.