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概要

kouchirouso_114_20180329

住民による住民のためのビジネスの必要性 101意識として,店舗や移動販売があることに感謝していて,住民自らが出資していることもあり帰属意識が高く,運営が継続的に行われることを何よりも欲しているということを指摘している。(2)住民による住民のためのビジネスコミュニティビジネスという観点からNPO 「ほほえみの郷トイトイ」の活動を評価するには,齋藤の指摘している住民の帰属意識の高さ,という点をなお具体的に検討する必要がある。ビジネスを営む組織と地縁型自治組織との関係は一定緊張関係を生むものであり,両者の折り合いをどのようにつけるのか,ということがとりわけ農山村地域のコミュニティビジネスについて議論されてきた。例えば石田正昭は,農山村地域におけるNPO 型組織(テーマ・コミュニティ)と地縁型自治組織(ローカル・コミュニテイ)の関係を取り上げている21。目的・目標を共有する人々による公益的なサービスの提供という側面では,自発性・機動性に特徴を持つNPO 型組織が優れている。しかし,形骸化しつつあるとはいえ町内会・自治会が一定機能している農山村地域では,地縁型自治組織とNPO 型組織は協働の関係というよりも,緊張・競合の関係が生じやすいと考えるべきであるという。緊張・競合の関係は主として地縁型自治組織の持つ地域の総意機関としての性格をNPO 型組織が軽視しがちなことから生じている。そこで石田は,地縁型自治組織の特性である地域社会との密着性や継続的な関係性と,NPO 型組織の特性である活動・事業の自発性や機動性の両方の要素を併せ持つような主体を想定することが適当であるとしている。具体的にどのような組織形態を考えるのかという点について,有田昭一郎は,中四国地方の地域運営組織の活動実態をふまえ,地域運営組織が担っている活動を安全・安心・活力の3つの領域に分けた上で,活動の経済事業化の可能性を検討している22。地域運営組織の担う安全領域の活動とは,防災,防犯等,社会経済動向に関係なく安定して対応されるべき領域の活動である。安心領域21 石田(2008),pp. 55-57。22 有田(2017),pp. 84-87。