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概要

kouchirouso_114_20180329

102 高知論叢 第114号の活動とは,地域の支えあい機能の維持,生活利便性の確保等,住民と行政が協働して安心して暮らせる生活環境の維持に取り組む領域の活動である。最後の活力領域の活動とは,住民の雇用・収入機会創出,活動資金創出等,挑戦的に収益事業を行い地域の活力を生み出す領域の活動である。そして,経済事業の不確実性を鑑みれば,安全領域の活動を経済事業化することは回避すべきであり,活動の経済事業化を検討できるのは安心領域の経済事業化が可能な部分(守りの分野の経済事業)と活力領域(攻めの分野の経済事業)であるとしている。活動の3つの領域の整理から,有田は,安全領域と経済事業化に向かない安心領域の活動を担う第1層と,経済事業化の可能性のある安心領域と活力領域の活動を担う第2層で地域運営組織を構成することを提案している。第1層は任意グループによるボランタリーな活動として,行政による活動費の保証が必要となる。第2層については問題意識を持つ住民が仕事として従事し,活動費は各経済事業の中での捻出を目指すというイメージである。そして,第1層部分に役員会を設け,構成員参画の下,活動計画を作成し,第2層の経済事業計画についても役員会において承認を受ける形にするということである。守りの分野の経済事業を継続させるためにも,採算性の高い攻めの分野の経済事業の展開は必要である。しかし,地域運営組織における経済事業は「地域づくりの経済活動」であるから,単に地域活動の資金源や地域の雇用創出といった経済効果を目指すのではなく,本質的には次世代の地域活動の効率性の向上や,若者世代が仕事として地域活動にコミットする機会を拡大するなど,次世代に地域を引き継ぐ効果をもつことこそより重視すべきであると有田はまとめている。地域運営組織の営むビジネスは,ビジネスの目的を問う必要性がある。コミュニティビジネスに関する議論は,従来のビジネスのあり方とは異なり,住民の主導性や,「コミュニティを元気にすることを目的に行う地域密着の事業」として,長期的な視野と共生といったコンセプトを念頭においている23。農家のサイドビジネス,プライベートビジネスではなく,地域への貢献を視野にい23 細内(2010),pp. 16-18。