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概要

kouchirouso_114_20180329

住民による住民のためのビジネスの必要性 103れなければ,補助金だのみの失敗事業の量産になる24。一方で,地域運営組織としての特徴を考えるには,ボランタリーで地域の合意形成を重視する部分,すなわち,地方自治の観点から,ビジネス活動の特徴づけをする必要もある。コミュニティビジネスの議論は,ビジネスの部分を中心に考察している。地域運営組織は,地域課題について住民主体で取り組むという点に重きがあるため,むしろ地域の合意形成,住民自治に重きを置いて考察される必要がある。NPO「ほほえみの郷トイトイ」の活動のあり方にみられるように,地域運営組織としてのビジネスは,住民自治の充実をはかるための手段であり,地域住民に支えられる,「住民による住民のためのビジネス」としての意味がある。山浦陽一は,地域「を」運営する組織としての課題と,地域「が」運営する組織としての課題,として整理している25。地域「を」というのは,組織運営の実態としての課題を指し,地域「が」というのは,組織の理念としての課題を意味している。特に後者の点について,山浦は,地域運営組織は地域コミュニティ組織であり,様々な事業で成果を上げても,地域住民の当事者意識や主体的な参画がなければ,地域運営組織と呼ぶことはできない,としている。住民自治に支えられ,住民自治を充実するためのビジネスは,地域の将来を,次の世代にどのような形で受け継いでいくのかという地域住民の思いを形にし,地域住民の地域への誇りを取り戻すものになる。本稿の最後に,地域住民の思いを形にするための交流拠点としての「小さな拠点」,地域運営組織の意義について,次項で検討してみたい。(3)「私設公民館」としての交流拠点「ほほえみの郷トイトイ」地方自治の観点から地域運営組織を考察する際には,行政との関係もみておかなければならない。全国の地域運営組織の設立の経緯に注目した山浦陽一は,行政の関与の強さから2つのパターンを指摘している26。1つは市町村行政か24 石田(2008),p. 88。25 山浦(2017),pp. 39-40。26 山浦(2017),pp. 5-6。