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概要

kouchirouso_114_20180329

住民による住民のためのビジネスの必要性 105で,社会教育法第20条において,「公民館は,市町村その他一定区域内の住民のために,実際生活に即する教育,学術及び文化に関する各種の事業を行い,もつて住民の教養の向上,健康の増進,情操の純化を図り,生活文化の振興,社会福祉の増進に寄与することを目的とする」ものであるとされている。長澤成次は,東日本大震災に公民館がどのように対応したかを検討する中で,公民館は学びと文化と自治活動の総合性を持った生きた公共空間として存在していることを指摘し,今後の公民館活動をめぐる課題を3点示している28。第1に,公民館における学びを創りだす際に,歴史的アプローチと現代的アプローチをクロスさせて取り組むという点である。現代に生きる人々が歴史認識を媒介させることによって,未来を展望する学びを生み出すという。第2に,地域の伝統文化を継承していくとともに,公民館活動の総体を通して地域の個性的な文化を創造していくという点である。そして第3に,公民館活動は住民自治力を高めることを目標としてきたのであるから,住民自治力による公共空間としての公民館をどう自治的に創造していくのかが問われているという点である。NPO 「ほほえみの郷トイトイ」の活動は,「小さな拠点」にこめる意味として,地域の伝統と歴史を次の世代へどのように引き継ぎいでいくかといった,時間軸の長さも意識されていた。「私設公民館」として,買い物支援のビジネスにとどまらない,地域の学びを通じた住民自治の拠点として発展の可能性をもっているところに,NPO 「ほほえみの郷トイトイ」の活動において注目すべき点がある。住民の学びと自治に支えられた地域課題への取り組みは,行政との「協働」を前向きな形で発展させる基礎にもなる。小内純子は,住民の「参加」と,行政と住民との「協働」の段階の違いについて言及している29。1990年代半ば以降,頻繁に用いられるようになった行政と民間の「協働」という言葉は,財政危機にあえぐ地方自治体が,地方分権化を押し進めつつ,住民サービスの水準をある程度維持するために,どちらかというと行政の側から推進されていったもの28 長澤(2016),pp. 117-119。29 小内(2017),pp. 20-22。