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概要

kouchirouso_114_20180329

106 高知論叢 第114号であった。一方で,NPO 法人の一定の成熟にみられるように,住民がもつ潜在的力を認めざるを得ない状況が生み出されていた。そこで小内は,「参加」ではなく「協働」にこめられている重要な点は,行政と住民が対等な立場にたって,共通の目標に向かって協力し合うことであるとしている。そして,行政と住民が対等な立場にたつ「協働」を実現するには,自主性の尊重,自立性の確保,相互の理解,目的の共有,情報の公開などの徹底が求められるという。行政と住民組織の「協働」は,住民による地域の学び,課題の発見と解決に向けた実践に基づくことで,対等な形ですすめていくことができる。NPO「ほほえみの郷トイトイ」の活動が地域運営組織としてもつ性格は,地域づくり活動としての住民自治の実践の1つのあり方を示しているということになるだろう。おわりに地域運営組織は住民の主体的な取り組みであるから,組織として営むビジネスも,地域課題の解決にかかわるものであることが求められる。NPO 「ほほえみの郷トイトイ」の取り組みは,ビジネスを通じて課題に取り組むだけではなく,住民自治の充実を考え,広く地域づくりとして取り組むところが重要な点であると思われる。そういった点から,住民自治に裏打ちされて地域で営むビジネスは,とりあえずは「住民自治ビジネス」という言葉で表現できるかもしれない。さらに,地域づくりの拠点としての「ほほえみの郷トイトイ」は,「私設公民館」として,住民の学びを支え,地域課題の発見と解決のための実践の拠点として,成長,発展していくことが期待されている。一方で,阿東地域の地域づくりという観点からみれば,旧5ヶ村の1つの地域の取り組みとして,点の活動を広げようとしている段階である。担い手となる人材育成も含めて,NPO の運営の継続性はもちろんあるが,同様の取り組みを点ではなく面に,他の地域にも広げることができれば,重層的な自治の仕組みとして,住民主体の地域づくりの展望がさらにひらけてくることになるだろう。