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概要

kouchirouso_114_20180329

110 高知論叢 第114号の流れの調整者としての独特の意義を持つことを指摘し,彼らのような企業をタイミング・コントローラーと呼んでおいた。前稿は,鉄鋼企業と造船企業の厚板取引におけるタイミング・コントローラーを紹介したが,本稿は製氷企業と飲食店(バー・クラブ,一般飲食店,喫茶店,酒屋,料理・割烹,ホテル・イベント会場など)の氷取引におけるタイミング・コントローラーを紹介し,材の流れの調整者としての彼らの役割を明らかにし,サプライチェーンにおける彼らの意義を再び確認するとともに事例を豊富化していく。本稿で対象とするのは,氷雪販売業者と呼ばれる企業である。以下では,氷の流通がどのように行われているのか,そして氷が如何に生産され,それが氷雪販売業者を介して飲食店に流通しているのかについて,製氷企業,氷雪販売業者の具体的なオペレーションを紹介する2。これらを踏まえて,製氷企業と飲食業との間で材の流れを調整する氷雪販売業者の存在意義を明らかにする。Ⅰ 氷の生産と流通氷雪販売業者が取り扱う氷は,都道府県知事の許可を受けた製氷工場で製造された純氷である3。純氷とは,衛生管理の行き届いた施設で製造された安心かつ安全な氷であり,「限りない透明感」「マイルドな食感」「固く溶けにくい結晶体」にこだわってつくられた氷である4。氷雪販売業者は製氷企業から直接卸し,各需要先に直接配達する経路が一般的である(図1)。一方で,大量に氷を使用する漁業協同組合や,一箇所で大量に販売する小売店(コンビニエンスストアやスーパーマーケット)に対しては,それらの事業者の求めによって製2 本稿での記述は製氷企業,氷雪販売業者に対するインタビュー調査(2014年7月から2015年12月)に頼る部分が多い。なお,このインタビュー調査は筆者らに加え,当時,高知大学人文学部社会経済学科に在籍していた杉本早紀氏,角谷聖斗氏,敦賀柊平氏とともに行った。彼らの調査研究の成果はそれぞれ杉本[2016],角谷[2016],敦賀[2016]にまとめられており,本稿ではこれらをおおいに援用している。3 金融財政事情研究会編[2016]1272頁を参照。4 厚生労働省医薬・生活衛生局 生活衛生・食品安全部生活衛生課調査係[2016]1頁を参照。