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概要

kouchirouso_114_20180329

114 高知論叢 第114号こともある。純氷の生産に当たっては,食品衛生法に基づく定期的な検査が義務付けられており,設備,施設についても厳しい衛生管理が求められている7。それでは,純氷はどのように流通するのだろうか。製氷企業が生産した陸上氷は氷雪販売業者に卸される。その際,製氷企業は,一本氷の半分(1玉)で卸す場合や,36個(地域によっては32個)に切り分けて1貫にするなど,大きさや形を加工して卸す場合がある。地域や加工賃の有無などによって異なっている8。製氷企業のなかには氷雪販売業を兼業している企業もあり,自社の製氷工場で生産した氷を砕氷し,包装氷9を販売する企業や,コンビニエンスストアと契約を結び,カウンターコーヒー(コンビニコーヒー)用の氷を生産,販売している企業も存在する10。また,従来は生産した氷を保管する目的で冷蔵倉庫を保有していたが,その設備を用いて冷蔵倉庫業を兼業している企業が多数ある11。つぎに,製氷企業を統計的に把握してみよう。図4は製氷企業の営業施設数の推移を示しているが,この20年間で大幅に減少していることが分かる。1996年度末に2,324箇所あった営業施設は,2016年には1,269箇所となっており,20年間で営業施設数は1,055箇所減少している。出荷数量と出荷金額をみると,前者は1978年の5,054,430トンが2013年には2,663,519トンになっており,35年間でおよそ半減している。それに対し,出荷金額は1978年に296億1,900万円だったものが,2013年は270億3,700万円であり,出荷数量と比較して減少幅は小さい。単位当たりの氷の出荷金額は上昇していることが分かる。ところで,かつて氷は食用や食材を冷やすことに加え,暑さを乗り切るための空調のような存在としても大きな需要を持っていたが,電気冷蔵庫やエアコンなどが普及してからはそうした需要は減少していった。特に家庭用電気冷蔵7 厚生労働省医薬・生活衛生局 生活衛生・食品安全部生活衛生課調査係[2016]1頁を参照。8 高知市内の製氷企業,氷雪販売業者へのインタビュー調査に基づいている。9 袋詰氷や,カップアイスなどの包装された氷を指し,特にコンビニやスーパーなどの小売店に流通している商品である。10 製氷企業へのインタビュー調査に基づいている。11 金融財政事情研究会編[2012]710頁を参照。