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概要

kouchirouso_114_20180329

124 高知論叢 第114号ている。この槽に比重1.18~1.2の塩化カルシウム溶液(ブライン)を満たしており,このブラインは製氷槽中に設備されたブライン冷却器によって冷却され,-10℃前後に保っている。また,ブライン攪拌機によって製氷槽中を0.125m/sec程度の速さで循環させている。この冷えたブラインのなかに製氷に使用する原水の入った亜鉛引鋼板製の容器(氷缶)を浸すと氷缶のなかの原水は外部から-10℃のブラインで冷却され,次第に結氷する。しかし,さきにもみたように氷缶のなかを静止状態のまま結氷させると,不透明な白氷ができるため,氷缶のなかに直径6~7㎜の細管を挿入し,この細管から空気泡を水中に放出して,絶えず空気で攪拌動揺させることで,原水中に含まれた不純物や空気泡が原水から分離するので,できた氷は透明なものになる。氷缶が9割程度凍結すれば,中央部に原水中の不純物が集まった心水が残るため,それを心水ポンプで吸い出して新鮮な水と入れ替える。こうして2昼夜が経つとすべてが凍結するため,結氷した氷缶をクレーンで引き揚げて,これを溶水槽に浸し,氷塊と氷缶を分離させる。溶水槽には常温水を入れているため,氷塊は常温水の熱によって氷缶の壁に接している部分が溶ける。このようにした氷缶を抜氷機に運び,氷缶を傾けると内部の氷塊が滑り出てくる。取り出された氷塊は貯氷室に貯蔵される。一方,空になった氷缶は注水機に運ばれ,原水を注水され,クレーンでまた元の製氷槽中に浸される。そして,氷缶の中に塵埃が入るのを防ぐとともに,製氷槽の外部から熱が伝わるのを防ぐため上部に樹脂製の蓋をし,製氷が再びスタートする。それでは,A社はどのように生産計画を立て,実際の生産に当たっているのだろうか。まず,前提条件として,A社が生産する純氷は水産用と陸上用の2種類であり,しかもそれらの生産に要する期間は,水産氷で2日程度,陸上氷3日程度と短い26。そのため,何を,いつ,どれだけ必要となるのかを大まかに予測することは難しくなく,そして,それらをいつつくるかを計画することにも大きな困難は伴わない。また,不良在庫化のリスクという側面においても,氷は時間とともに大きく劣化することはないため,長期の在庫にも耐えうる27。26 1日の生産能力は72トンである。27 氷を在庫するためには冷凍倉庫が必要であり,その地代,電気代が必要になる。なお,