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概要

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126 高知論叢 第114号氷販売,貸しおしぼりサービス,生活雑貨販売を手掛けている。毎年の売上高は2,000万円前後で推移しているが,氷彫刻関連の売上高は5%にも満たないという。B社は正社員3名,アルバイト2名を雇用している29。B社は製氷企業A社のほかにもう1社から純氷を仕入れている。販売先は,通常期が150~170店舗であり,夏場になると220~230店舗になる。8月のよさこい祭の時期が最大の繁忙期であり,それを過ぎると販売量は減っていく。ただし,B社の場合,販売店の8割がバー,スナック,ラウンジで占めており,常に氷が消費される環境にあるため,激減することはない。なお,残りの2割は,居酒屋向けが1割程度,その他飲食店(喫茶店など)やイベント(夏場のかき氷,お祭り,バーベキュー,うどん店,そば店など)が1割程度である30。ところで,B社の販売先は微増傾向にあるという。しかし,それは価格競争を仕掛けたり,営業攻勢の結果ではない。かつて高知県の氷雪販売業者は同業者組合をつくり,氷雪販売業者間の競争が激化しないよういくつかの暗黙のルールが敷かれるようになった。例えば,販売価格は現在でも1貫目は330~350円の幅で収まっているが,これも同業者組合が強かった時代の名残であるという。また,氷雪販売業者が率先して営業活動を行わないことも暗黙のルールになっている。こういう状況のなかでB社が販売先を増やすことができた理由は,透明感のあるきれいで溶けにくい氷を供給してきたことに加え31,全国でも類いまれな種類の加工を行っていること,顧客のニーズに対応した氷や顧客の課題を解決する氷を提供してきたことだと自己分析している32。例えば,1990年前後に,B社はあるCM のワンシーンに当時珍しかった丸氷が使われていたのを見て,さっそく,提供しはじめていた。氷にこだわりを持っていた飲食店があったが,そこでもまだ丸氷の魅力に気付いていなかった29 高知市内に立地する他の氷雪販売業者も2~4名程度である。30 喫茶店は以前と比較すると激減し,取引のある店の氷の使用量も僅かであるという。カフェやスイーツ店はほとんどが自動製氷機を使用しており,時折,自動製氷機の故障や製氷能力が追い付かない際に注文が入る程度である。31 溶けにくい氷は,氷雪販売業者にとっては売上を減少させる要因になりかねない。なぜならば,溶けやすい氷の方が飲食店の消費量は増えるからである。32 1960年代には高知市に氷雪販売業者が40数社存在していたが,現在では10社強になっている。加工氷に取り組まなかったところは廃業や転業に追い込まれたという。