ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

kouchirouso_114_20180329

氷 雪 販 売 業 者 と 氷 1334 小 括ここでは氷雪販売業者B社の存在意義を整理し,タイミング・コントローラーとしての役割を確認する。前節ではB社の取引先を飲食店に絞ってきたが,彼らに対するB社の貢献は,必要な時に,必要な仕様の氷を,必要な量だけ配送することにある。これは極端に言えば,注文から数十分後に,1袋単位で配送することによって,飲食店が販売しようとする飲料を提供することを可能にしており,B社は取引先の販売機会の拡大に貢献しているといえる。飲食店側が,B社のような氷雪販売業を必要とする理由は,そもそも氷の在庫スペースが限られており,他の食材や器材の保管スペースを確保しなければならないため,冷凍庫を拡大することは非常に難しく,日々の営業に不要な氷は他社で在庫するほかないからである。さらに,B社は多様な仕様(用途,サイズ,製氷方法,内容物)の加工氷を供給することで,飲食店が彼らの顧客に提供する価値を高めている。とりわけ,氷にこだわりをもって飲料を提供している店の場合,使用するグラスにマッチした加工氷を添えたいだろう。その際,飲食店側に氷を加工するスキルと時間の少なくともどちらか一方が欠けている場合には,B社のように多様な仕様の加工氷を提供する氷雪販売業者の存在は強い味方になる。つまり,煩雑かつ難しい業務(である氷の加工)をB社は飲食店に代わって行っているといえよう。一方,製氷企業にとって,氷雪販売企業の存在意義とはどのようなものだろうか。そもそも製氷企業は氷の加工を手掛けず,1玉単位で出荷することを基本としてきた。そのため,製氷企業にとっては氷雪販売業者が行う加工は煩雑な業務であり,しかもB社が展開する多種多様な氷を少量ずつ加工することはさらに煩雑性を高める。そして,多種多様な加工氷の展開は在庫管理コストの上昇にもつながる37。これまでは氷は水産氷と陸上氷の二種類を一本氷や1玉といった数少ない品種で管理すればよかったが,B社のように50を超える品種のものを提供するようになれば,それらを加工・保管し,注文に応じて小口配送を実現することは複雑な仕組みづくりを要請する。つまり,B社は製氷企業37 製氷企業は冷凍倉庫業を兼業していることが多いため,そういった企業は,在庫管理ノウハウを有しているかもしれない。