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概要

kouchirouso_114_20180329

134 高知論叢 第114号には実現が難しいオペレーションを代わりに行っているといえる。これらはどれもがB社のタイミング・コントローラーとしての存在意義を示しており,氷取引において氷雪販売業者が製氷企業と飲食店との間で材の流れを調整する役割を担っているといってよい。おわりに前稿では,鉄鋼企業と造船企業との厚板取引に介在するスチールセンターをタイミング・コントローラーとして整理した。つまり,タイミング・コントローラーは,①ある製品の生産における素材から完成品に至るモノの流れの中で,素材企業と完成品企業との間に介在し,その素材の流れ,つまり,素材の流量と流速の変換機構であること,②この企業の規模はそれほど大きなものではないこと(中小・零細企業がほとんどである),そして,③この企業は,多くの場合,素材の姿態変換(加工処理等)を行うが,それが付加価値に占める割合はそれほど大きくない場合が多いことであった。そのうえで,タイミング・コントローラーの生成条件を検討した。①完成品企業が使用する当該素材の数量が多量であり,しかもその仕様が多岐にわたっていること,この結果,②完成品企業は,多種・多様な素材を準備しなければならないが,コスト削減のためには可能な限り在庫量は抑えたい,つまり,完成品企業は,可能であればJIT 納入を志向すること,一方,③素材生産企業の生産技術は,ロット生産を基本とし,しかも比較的生産のリードタイムが長く,コスト削減のためにはできるだけ大ロット生産を志向すること,しかしそれは,JIT 納入には適合的な生産方法ではないこと,こうして,④素材生産企業と完成品企業のコスト削減の方向が矛盾するとき,タイミング・コントローラーの仲介によって,素材生産企業と完成品企業のコスト削減を両立させることができれば,タイミング・コントローラーが生成すること。つまり,A + B > Cが成立すれば,タイミング・コントローラーによるコスト削減効果を素材企業,完成品企業とも享受できることを明らかにした。