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概要

kouchirouso_114_20180329

氷 雪 販 売 業 者 と 氷 135A:素材生産企業の大ロット生産によるコスト削減B:完成品企業におけるJIT 納入によるコスト削減C:タイミング・コントローラーが介在することによるコスト上昇この取引においてタイミングを決定するのは完成品企業であるが,完成品企業は,タイミング・コントローラーが介在することによって,素材生産企業の生産技術の制約から解放され,タイミングの決定にかなりの自由度を得ることができる。そして,それによってJIT 納入が現実になる。言い換えれば,タイミング・コントローラーは完成品企業のタイミングの決定に効率的に対応しているのである。一方,素材生産企業も,完成品企業の納入タイミングの拘束から自由になれる。その分,素材生産企業の効率は高まるのである。以上が前稿で整理したことである。氷取引における氷雪販売業者B社がタイミング・コントローラーの役割を演じていることが確認できそうであるが,うえで示した生成条件についていくつか検討すべきであろう。まず,①本稿で完成品企業に相当する川下企業は飲食店であるが,彼らが使用する氷の数量は,造船用厚板との絶対数で比較した場合,飲食店の使用量が多量であるとは言えないだろう。また,②造船企業は多種・多様な素材を準備しなければならないが,飲食店が取りそろえる氷は限定されている。さらに,③素材生産企業である製氷企業もある程度のロット生産を余儀なくされているが,製氷企業A社の製造工程では効率を度外視すれば最低約1.3トン(製氷槽ひとつに対して氷缶10本入るため,一本氷が10本)から生産が可能である38。これはB社の冷凍庫(貯蔵施設)の最大貯蔵量は約1.7トンであることから,比較的小ロットで生産可能だといえるだろう。では,なぜ氷雪販売業者B社がタイミング・コントローラーになり得るのだろうか。飲食業は可能であるならJIT 納入とまでいかなくとも,在庫スペースの観点から数日分の氷しか保有したくない。それに加えて,氷は加工しなけ38 実際,工場を見学した際は,3槽で製氷するのみであった。製氷設備の建設から既に35年経っており,減価償却が済んでいるため,固定費負担が相当に低いから可能なのかもしれない。なお,製氷室にある大型水槽には50数個の製氷槽に区切られている。