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概要

kouchirouso_114_20180329

136 高知論叢 第114号れば,付加価値が生まれない。加工はかつて多くの飲食店が担ってきたが,自動製氷機の影響も受けて加工する機会が減少し,その結果,飲食店のスタッフが加工技能を有しなくなった。その一方で,提供する飲料を差別化する手段として氷に着目した飲食店は,加工技能を外部化するようになり,それを担えた氷雪販売業者が生き残りを図れたのだろう。もし,そうだとしたら,製氷企業,氷雪販売業者,飲食店の誰もが氷の加工を実行することは可能であるが,その加工技術を磨く機会が最も多かったのは氷雪販売業者であろう。そして,技術を活用して各取引先の課題を解決したのがB社と言ってよいだろう。従前,求められていたタイミング・コントロール機能を,顧客適応によって要請される氷のカスタマイズによってタイミング・コントロール機能を高度化させることで,氷雪販売業者の存在意義を担保したと言えるかもしれない。そういう意味において,前稿で示した生成条件以外にもタイミング・コントローラーが生成する可能性はありそうである。本稿では氷雪販売業者B社を題材にタイミング・コントローラーとしての存在意義を検討してきた。しかし,氷取引においては氷雪販売業者以外でもタイミング・コントロール機能を包摂できるかもしれない。稿を改めて,他の具体的なケース分析を行い,事例を豊富化したい。【付 記】 本研究は科学技術研究費補助金 基盤研究(B)「サプライチェーンにおけるタイミングコントローラー:市場適応方法の比較研究(15H03382)」(研究代表者:岡本博公)の助成を受けた研究成果の一部である。参考文献・ 金融財政事情研究会[2016]『【第13次】業種別審査事典 第1巻』きんざい。・ 金融財政事情研究会[2012]『【第12次】業種別審査事典 第1巻』きんざい。・ 厚生労働省医薬・生活衛生局 生活衛生・食品安全部生活衛生課調査係[2016]「氷雪販売業の実態と経営改善の方策」(http://www.mhlw.go.jp/fi le/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000172547.pdf )・ 杉本早紀[2016]「氷をめぐるホットでクールな競争と協調 補完財が市場創造する可能性 」高知大学人文学部社会経済学科卒業論文。