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概要

kouchirouso_114_20180329

140 高知論叢 第114号4月18日に,かねて取引のあったC から,本件手形の割引依頼を受けた。X は,振出人であるY について,会社年間や民間の信用調査機関のデータを調べたり提携の同業者に問い合わせるなどして信用調査を行ったうえで,Y の信用状態に問題はないと判断した。このときX が調査先から得た情報に,盗難情報は掲載されていなかった。同年4月21日,C はX に本件手形を持参した。X は,手形の記載内容と裏書の形式的連続を確認し,割引料8万5982円を差し引いた248万0669円を交付して,C から本件手形を取得した。本件手形には第一裏書人欄にA,第二裏書人欄にB,第三裏書人欄にC の署名があり,それぞれ白地式裏書がなされている(もともと,第三裏書としてD の署名がなされていたが,抹消されている)。X は本件手形の取得に際して,C の本件手形の入手経路については,C から,B から取引により取得した商業手形であるとの説明を受け,その裏付資料として売買契約書の写しの提出を受けた。また,D の第三裏書が抹消されていることについては,よくあることとして不審に思わなかった。裏書の形状に格別異常がなかったため,X は,本件手形の流通経路について疑念を抱かず,振出確認や裏書確認は行わなかった。同年4月末に,X は,本件手形の再割引を依頼したところ,依頼先の金融業者から盗難手形であることを理由に再割引を拒否された。X は,本件手形を支払呈示期間内に支払場所に支払呈示したが,支払いを拒絶されたため,Y に対し,手形金256万6651円およびこれに対する満期の日である平成9年6月23日から支払済みまで手形法所定の年6分の割合による利息の支払いを求めた。なお,平成10年1月27日に,A は本件手形につき,加古川簡易裁判所より除権判決を得ている。Y およびA(第一審のみ被告)は,第一に,A の第一裏書は,同時に盗まれたA の代表者の個人印を用いて,何者かに偽造されたものであること,第二に,X は,本件盗難の事情や,自己の前者が本件手形について無権利者であることについて悪意または重大な過失があったこと,第三に,X が本件手形を善意取得していたとしても,除権判決によって手形上の権利を喪失したことを主張し