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概要

kouchirouso_114_20180329

142 高知論叢 第114号Y は控訴したが,第二審(東京高判平成10年9月16日民集55巻1号14頁)は控訴を棄却した。そこで,Y は,上告受理の申立てをした。〔判旨〕上告棄却手形について除権判決の言渡しがあったとしても,これよりも前に当該手形を善意取得した者は,当該手形に表章された手形上の権利を失わないと解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。手形に関する除権判決の効果は,当該手形を無効とし,除権判決申立人に当該手形を所持するのと同一の地位を回復させるにとどまるものであって,上記申立人が実質上手形権利者であることを確定するものではない(最高裁昭和26年(オ)第424号同29年2月19日第二小法廷判決・民集8巻2号523頁参照)。手形が善意取得されたときは,当該手形の従前の所持人は,その時点で手形上の権利を喪失するから,その後に除権判決の言渡しを受けても,当該手形を所持するのと同一の地位を回復するにとどまり,手形上の権利までをも回復するものではなく,手形上の権利は善意取得者に帰属すると解するのが相当である。加えて,手形に関する除権判決の前提となる公示催告手続における公告の現状からすれば,手形の公示催告手続において善意取得者が除権判決の言渡しまでに裁判所に対して権利の届出及び当該手形の提出をすることは実際上困難な場合が多く,除権判決の言渡しによって善意取得者が手形上の権利を失うとするのは手形の流通保護の要請を損なうおそれがあるというべきである。〔研究〕一部反対一 本判決は,適法に振り出された手形の所持人が除権判決を得た場合において,除権判決によって善意取得者は手形上の権利を失うか否かについて,最高裁としてはじめて判断を下したものであり,かつ,善意取得優先説に立つことを明らかにしたものとして重要な意義を有している。本判決以前にも除権判決の効力に関する判例は存在した。しかし,例えば,最高裁昭和29年2月19日第二小法廷判決(民集8巻2号523頁)は,「喪失株券に関する除権判決の効果は,右判決以後当該株券を無効とし,申立人に株券を所持すると同一の地位を回復