ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

kouchirouso_114_20180329

除権判決と善意取得者の権利 143させるに止まるものであって,公示催告申立の時に遡って右株券を無効とするものではなくまた申立人が実質上株主たることを確定するものでもない」としながらも,「所定期間内に権利の届出及び株券の提出をしなかった前記第三者が除権判決の効果としてその実質的権利(たとえば公示催告期間中における善意取得にもとずく権利)を失うに至る場合があるかどうか」については「必ずしも議論の余地なしとしない」として,除権判決によって善意取得者が実質的権利を失うか否かについては立場を留保していた。また,最高裁昭和47年4月6日第一小法廷判決(民集26巻3号455頁)は,署名後交付前に手形を盗取された署名者が除権判決を得た場合について,「約束手形に振出人として署名したが,みずからこれを流通におく前に盗取されまたは紛失した者に対して公示催告および除権判決の申立権が認められるのは,除権判決により喪失した手形を無効にして,除権判決の確定後その無効になった手形を悪意または重大な過失なくして取得した者が右の振出署名者に対して手形上の責任を追求する場合に,除権判決の存在をもってこれに対抗し,その支払を拒絶することができるようにするためであって,除権判決が確定したからといって,その確定前に喪失手形を悪意または重大な過失なくして取得し,その振出署名者に対して振出人としての責任を追求しえた者の実質的権利までも消滅させようとするものではないと解するのが相当である」としながらも,「けだし,約束手形に振出人として署名をした者は,その手形の債務者となるにとどまり,手形上の権利を取得するものではなく,……適法に振り出された手形の所持人がその手形を喪失して公示催告の申立をした場合のように,除権判決の確定前に当該手形の善意取得者が現われて,除権判決により権利行使の資格を回復した手形喪失者との間に,権利行使の資格の競合状態を生ずるおそれはないから,除権判決前の権利取得者の権利を否定する必要はないからである」と判示した。すなわち,振出署名者が除権判決を得た場合と,適法に振り出された手形の所持人が除権判決を得た場合とを区別して,後者の場合には除権判決によって善意取得者は実質的権利を失うとする立場(除権判決優先説)を前提として,とくに前者の場合には,権利行使の資格の競合状態を生ずるおそれがないため善意取得者は権利を失わないということを認めたものと,同判決を捉えることもできるもので