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概要

kouchirouso_114_20180329

144 高知論叢 第114号あった。このような判例の流れのなかで,適法に振り出された手形の所持人が除権判決を得た場合について,善意取得優先説に立つことを明らかにした本判決の意義は大きい。公示催告・除権判決制度は,現行においては,公示催告・除権決定制度として,非訟事件手続法に規定が置かれ,例えば,公示催告期間について,旧制度では最短6か月であったのに対して,現行制度では最短2か月(非訟103条)とされているなど,若干の変更はあるものの,現行制度においても,その手続に本質的な差異はない(橡川泰史「判批」手形小切手判例百選〔第7版〕162頁)。それゆえ,現行法においても,本判決の意義は失われるものではない。以下においては,除権判決が善意取得に与える影響(除権判決の効果)と善意取得者の権利行使の方法とにわけて,考察を加える。なお,筆者は,除権判決の効果については本判決に賛成であるが,善意取得者の権利行使の方法については本判決に反対である。二 公示催告手続が開始され,除権判決がなされる前に,申立てに係る有価証券が善意取得されることについて争いはない。しかし,その後,権利の届出(現行では「権利を争う旨の申述」)がないままに,除権判決がなされた場合,除権判決によって善意取得者は実質的権利を失い,除権判決取得者が権利を回復するのか(除権判決優先説),それとも,除権判決によっても善意取得者は権利を失うことなく手形債務者に対して権利を行使することができるのか(善意取得優先説),問題となる。公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律は,除権判決の効力について次のように定める。まず,同法784条1項は,「除権判決ニ於テハ証書ヲ無効ナリト宣言ス可シ」と定める(除権判決の消極的効力。非訟118条1項)。「無効」とは,証券と権利との結合が解かれて,証券は単なる紙片となるということを意味する。その結果,資格授与的効力が失われ,除権判決の確定後は,善意取得は成立せず,善意支払者も当然には免責されなくなる(金子修編『逐条解説非訟事件手続法』(商事法務,平成27年)401頁)。次に,同法785条は「除権判決アリタルトキハ其申立人ハ証書ニ因リ義務ヲ負担スル者ニ対シテ証書ニ因レル権利