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概要

kouchirouso_114_20180329

除権判決と善意取得者の権利 145ヲ主張スルコトヲ得」と定める(除権判決の積極的効力。非訟118条2項)。「証書ニ因レル権利ヲ主張スルコトヲ得」とは,申立人に証券を所持するのと同一の地位を回復させるに止まるものであって,申立人に実質的権利を与えるという意味での形成的効力を定めたものではなく,また,その者の実質的権利を確認するような確認的効力をもつものでもない(河本一郎「株券の除権判決」田中耕太郎編『株式会社法講座第二巻』(有斐閣,昭和31年)801頁以下)。また,そのように解すべき理由として,次のように述べられている。すなわち,公示催告手続において,申立人が喪失証券の実質的権利者であるか否かを審理することなく,申立人は単に証券の最終所持人であったことを疎明すれば足りるものとされ,また,その実質的権利について争いを生じたときは,公示催告手続を中止して,その確定は通常訴訟に委ねられる等の点を考慮すれば,除権判決を得た者が実質的権利までをも取得すると解することはできないとされる(雨宮真也「除権判決の効力」駒澤大学法学論集10号119頁(昭和48年))。除権判決によっても,実質的権利を回復することはできないとすれば,善意取得されてしまった場合には,除権判決を得た者にとって,除権判決を得た意味はないことになる。そこで,公示催告期間を設けて証書の所持人に権利の届出を催告する手続は,善意取得者の保護と公示催告手続の申立人の保護との調整点をなしているものであるから,善意取得者がその権利を確保するには公示催告期間内に権利の届出をなすことを要し,その届出を怠るときは,除権判決によりその権利は除斥されるとの見解がある(大隅健一郎「判研」法学論叢60巻4号120頁(昭和29年))。しかし,この見解には賛成できない。そもそも,除権判決制度は,証券と権利との結合を解くことによって,申立人に証券を所持するのと同一の地位を回復させることにその目的がある。すなわち,呈示証券性を有する有価証券において,権利を行使するためには証券の所持(形式的資格)が必要であるから,証券を喪失したままでは権利を行使することができない。そこで,除権判決によって申立人は形式的資格を回復することができるのである。このように考えるならば,権利の届出による善意取得者の保護と申立人の保護との調整点とは,どちらが形式的資格を取得するかという意味でなければならない。すなわち,権利の届出をすることによって,善意取得者が形