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概要

kouchirouso_114_20180329

146 高知論叢 第114号式的資格を維持するか,それとも,権利の届出を怠ることによって,有価証券が無効とされる結果,申立人が形式的資格を回復するかという意味において,調整点でなければならない。したがって,権利の届出を怠るときは,善意取得者が形式的資格を維持できないだけであって,実質的権利が除斥されるわけではない。以上の理由から,除権判決が善意取得に与える影響について,「手形が善意取得されたときは,当該手形の従前の所持人は,その時点で手形上の権利を喪失するから,その後に除権判決の言渡しを受けても,当該手形を所持するのと同一の地位を回復するにとどまり,手形上の権利までをも回復するものではなく,手形上の権利は善意取得者に帰属する」と判示した本判決に賛成である。ただし,本判決が,「公示催告手続における公告の現状からすれば,手形の公示催告手続において善意取得者が除権判決の言渡しまでに裁判所に対して権利の届出及び当該手形の提出をすることは実際上困難な場合が多く,除権判決の言渡しによって善意取得者が手形上の権利を失うとするのは手形の流通保護の要請を損なうおそれがある」と判示している点については疑問である。この点,証券の無効宣言のための公示催告制度が,その制定当時から,このような方法に公知性があるとしたことは,手形を取得する者は,少なくとも官報または新聞紙・支払地の裁判所および取引所の掲示板をみるよう義務づけられたとも考えられ,現在の情報技術において,公示催告が技術的に公知性を持ち得ないという説明は通用しないとの批判がある(柴崎暁「判研」判タ1118号86頁(平15))。そもそも,善意取得者が権利の届出をしないことによって失うのは,実質的権利ではなく,形式的資格である。それゆえ,公示催告手続における公告の現状と善意取得者の実質的権利とは結びつけられて論じられるべき問題ではない。三 除権判決には申立人に実質的権利を回復する効力はないとすると,実質的権利は善意取得者に帰属し,形式的資格は申立人に帰属することになる。それゆえ,善意取得者はいかなる要件のもとで権利を行使できるかが問題となる。この点,前記最高裁昭和47年判決は,「無効に帰した手形を所持する実質的