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概要

kouchirouso_114_20180329

148 高知論叢 第114号であることを証明しないでも,当然に権利を行使することができるとともに,義務者はこのような証券の所持人に権利の行使を許せば,たといその者が無権利者であっても,免責を受けることができる」とされる(証券の積極的作用)。そして,「第二に,権利者であっても,証券を所持しない限りは,権利を行使することができず,従って義務者は証券を所持しない者に権利の行使を許しても,後から権利者が出てきたら,重ねてその権利行使を認めざるをえない」とされる(証券の消極的作用)。それゆえ,所持人が証券を喪失すれば,証券の積極的作用がなくなるため,「自己が権利者であること」を証明しなければならないし,さらに,証券の消極的作用がなくなるため,「他に権利者がいないこと」を証明しなければならないとする。しかし,自己が権利者であることの証明や他に権利者がいないということの証明はきわめて困難であるため,公示催告によって権利者を捜索する方法が考案されたと述べる。すなわち,申立人は,証券を所持していたこと,また,その証券を喪失したことについて一応疎明をすれば,完全な証明がなされたわけではないが,所定の期間内に権利の届出がなかったという事実が加わることによって,いわば疎明が証明にまで高められたのと同様な取扱いをすることによって,証券を喪失した者も,「あたかも証券を所持するのとまさに同じ地位を認められることとなる」とされる。要するに,証券には,いわゆる資格授与的効力として所持人を実質的権利者として推定する作用と,権利行使の要件(形式的資格)としての作用とがあるが,証券を喪失した場合には,他の方法によって,上記2つの作用を補う必要があり,そのために考案されたのが公示催告・除権判決制度であるとされる。さらに,あたかも証券を所持するのと同じ地位が認められると述べられていることから推察するに,除権判決には資格授与的効力として所持人を実質的権利者として推定する作用と,権利行使の要件としての作用とがあるということになろうか。一般的に,除権判決によって申立人は権利推定を受けると考えられている。しかし,筆者は,この点,懐疑的である。そもそも手形の所持人が権利推定を受けるのは,単に手形を所持しているからではなく,裏書の連続する手形を所持しているからである(手形法16条1項)。つまり,権利推定は,裏書の連続