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概要

kouchirouso_114_20180329

151 研究ノート高知県における学校給食の現段階岩佐和幸,牧 耕生,島内寿代,中越吉正,松尾浩子  はじめに現在,学校給食が,社会的な関心を集めている。学校給食は,子供たちの栄養摂取を通じて身体的・精神的成長に資する役割を有しているが,それに加えて,2005年制定の食育基本法以降は,食を支える農業や地域社会,文化等を理解する食教育の「生きた教材」としても重視されるようになった1)。しかし,その一方で,1980年代以降の行財政改革の下で,センター化や民間委託を柱とする給食合理化が各地で進められ,最近では調理場設置を伴わない業者配送型の「デリバリー給食」が登場する等,コスト優先の安易な給食導入がもたらす影響が懸念されている2)。加えて,1990年代以降の格差・貧困の拡大に伴って,子どもの食の貧困や生活格差,給食費未納といった深刻な問題も浮上しており,こうした問題に対する新たな対応も求められている3)。本来,学校給食は,自治体の教育委員会が責任を持って運営する「公共食」1) 牧下圭貴『学校給食  食育の期待と食の不安のはざまで  』岩波書店,2009年,新村洋史編『給食・食育で子どもが変わる』新日本出版社,2016年。2) 最近の例として,2016年に開始された神奈川県大磯町のデリバリー給食が挙げられる。同町では,20km離れた町外からの弁当配送が原因で, 冷めた給食に起因する残食率の異常な高さが指摘された他,髪の毛・虫等の異物混入も問題となり,コスト重視の安易な給食導入が多方面から批判された。最終的にはデリバリー給食は中止され,同町では自治体内での施設設置が改めて検討されるようになった。「『おいしくない』町立中学の給食, 食べ残し26%」『朝日新聞』2017年9 月16日,「自前の給食施設検討へ 神奈川・大磯,食べ残し問題受け」『朝日新聞』2017年10月16日付。3) 鳫咲子『給食費未納  子どもの貧困と食生活格差  』光文社新書,2016年。  高知論叢(社会科学)第114号 2018年3 月