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概要

kouchirouso_114_20180329

152 高知論叢 第114号という性格を有している4)。その意味で,自治体における教育理念や政策方針によって,給食のあり方も地域ごとに差異が生じることになる5)。本稿では,こうした問題意識を踏まえつつ,食と農のアドボカシーグループ・高知県食健連(食糧と健康,地域を考える高知県連絡会)メンバーが2017年に行った実態調査を基に,高知県内における学校給食の実施状況の現段階を明らかにしていきたい6)。高知県は,完全給食の実施率が全国的に見て低水準の「学校給食後進県」であり,給食不在の地域や学校では,保護者側より完全給食の実施を熱望する声が長年続いてきた7)。ところが,最近になって,児童・生徒数の多い高知市・南国市の中学校や給食空白地域の土佐清水市において給食の完全実施に踏み切る動きが相次いでおり,老朽施設の改築も各地で進む等,改善の兆しが見られるようになった8)。と同時に,新しい施設の整備・運営に際しては,施設のセンター化や民間委託の導入が顕著になっており,今後も拡がる気配を見せている。では,これらの給食の新規導入の動きを含め,県内では現在どのような取り組みがなされており,一体どのような課題を抱えているのだろうか。県内学校給食の動向を探る手がかりとしては,県教育委員会が毎年公表している『高知県の学校給食』が挙げられる。同資料は,県内における給食実施の動向を総合的にまとめた資料ではあるものの,実施の概要以上の詳細な内容までは十分把握しきれていない。そこで,今回,高知県内における公立小・中学校の学校給食の実施状況について,県教育委員会や高知市,南国市の各教育委4) Kevin Morgan & Roberta Sonnino, The School Food Revolution : Public Food and theChallenge of Sustainable Development, Routledge, 2008(杉山道雄・大島俊三共編訳『学校給食改革  公共食と持続可能な開発への挑戦  』筑波書房,2014年)。5) こうした点で,高知県と同様に給食実施率の低い大阪府を対象とした以下の調査研究が,非常に参考になる。樫原正澄・赤井洋子・石川友美・伊藤佳代子・森正子・佐保庚生「大阪府内における学校給食の現状と課題」『関西大学経済論集』第66巻第1号,2016年6月。6) Ⅰ・Ⅱ(岩佐和幸),Ⅲ(中越吉正),Ⅳ(牧耕生),Ⅴ(松尾浩子),Ⅵ(島内寿代)の要領で分析作業を項目ごとに分担し,最終的な総括・執筆を岩佐が行った。7) 完全給食とは,パン・米飯,ミルク,おかずの3点が全てそろった給食のことである。それ以外には,ミルクとおかず等で構成される補食給食と,ミルクのみが提供されるミルク給食がある。8) 高知市と南国市は2017年12月に中学校給食がスタートした。また,高知市中学校給食と土佐清水の小・中学校給食は,2018年度内を予定している。