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概要

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162 高知論叢 第114号動であり,ランチルーム給食の際に産地・旬の説明を行ったり(北川村),月ごとの村内産品を献立表に記載したり,校内放送で村内食材の情報発信を行ったりする(日高村)のが,代表例である。第2に,ただ食べるだけではなく,自分たちで食事を作る取り組みも,各地で行われている。具体的には,小学5・6年向けの朝ご飯料理教室や(仁淀川町),朝ご飯をテーマにした親子料理教室・試食会(越知町),「食育の日」のお弁当持参(津野町),中学生が自分で弁当を作る「お弁当プロジェクト」(大月町)等が挙げられる。第3に,総合学習で食品開発に取り組む事例も存在する。例えば,高知市の横内小学校では,総合学習の時間に地元洋菓子店と協力して米粉パンを作り,それを市内給食の自由献立に取り入れる方向にまで発展していった。第4に,地元農業との連携である。例えば,生産者との交流給食をはじめ(黒潮町),「食育の日」を設定して地場産品の活用率(品目ベース)を5割以上にする(宿毛市)といった取り組みが行われている。また,農業者との交流にとどまらず,実際に農業を体験させる活動も存在する。例えば,須崎市では,小学5年生にコメ作りを体験させて,児童の作ったコメを給食に用いるという実践が行われている。最後に,こうした食育実践を総合的に展開してきた南国市の取り組みを紹介しておこう。同市では,農業関連の部署と教育委員会とが連携しながら,1997年の棚田米導入を皮切りに農業政策と教育政策の一体的な取り組みを展開してきた。その内容は,市内全校での自校炊飯から,地元産のグレープ・すももの給食向け加工品開発,茶や味噌づくり等の体験学習を経て,2005年には「食育のまちづくり宣言」「食育のまちづくり条例」制定へと発展し,2004年には「食の架け橋賞」の優秀賞受賞という形で社会的に評価されるに至っている。同市の特徴は,給食を出発点に食と農と環境をつなぐ学習を意識的に行っている点と,校区という狭域レベルでも食育を推進している点にある。例えば,市内の御免野田小学校では,地元生産者の枯渇に直面した漬物用大根生産の伝統を残すべく,児童が参加して収穫体験を行い,その漬物を給食に登場させるという循環を創出している。市の担当者によると,「校区で食の財産を引き継ぐ内容