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概要

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高知県における学校給食の現段階 183もう1つの違いは,離職率の差である。2年連続勤務者の割合をみると,民間資本の場合は安芸市で6割,高知市では8割にとどまり,1年で離職する者が多いのに対して,地元団体においては宿毛市では全員が継続勤務という結果であった。民間委託における非正規雇用の場合,労務派遣というビジネスモデルゆえにコストの大半をしめる労働コストを抑制することが必須条件である。そのため,非正規に加えて賃金水準も最低賃金プラスαが一般的であり,給食現場での労働負担に見合わず,調理員の定着による仕事・熟練の継承には向かわない傾向がある19)。それに対して,給食センターでも自治体直営のこうなん学校給食センターでは,調理員の時給は1000円であり,委託に比べて高めの賃金設定がされている20)。このように,民間委託の雇用創出効果は,あくまでも非正規が主体であるとともに,安定雇用の面でも限界があることが推察される。では,外部委託は,これまでどのような影響をもたらしているのだろうか。これについては,今回は回答数が少なかったため,十分な考察は難しい。それでも,効果・メリットとしては,「調理等業務の合理化と,経費の削減」(安芸市),「経費削減」(黒潮町)が挙げられた一方,課題については「別の業者になった場合や雇用条件等で調理員が止めてしまう等の不安」(仁淀川町)といった継続性や調理員確保への不安が指摘されたことを紹介しておきたい。以上のように,県内でも民間委託の波が2000年代以降起きているが,今後も高知市(中学校)や土佐清水市の他に,土佐市や須崎市でも民間委託の実施が検討されており,その波はこれからも拡がる可能性が考えられる。だが,民間委託にも,本章で明らかにした民間給食資本委託型か,地元団体委託型のどちらの道を選択するかによって,地産地消や地域内雇用,法人税収といった地域経済への影響は大きく変わることになる。その意味で,今後も委託化の判断はかなり慎重に行わなければならないとともに,仮に委託を進める場合でも,どのような道を選択するのかを,自治体側では十分吟味しなければならない。19) 例えば,県内受託企業の1つであるメフォスの場合,時給は750円に設定されている(2017年2月時点)。他の企業も最低賃金よりも若干高めであることに変わりはない。20) こうなん学校給食センターヒアリングによる(2017年6月9日)。