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概要

kouchirouso_114_20180329

186 高知論叢 第114号びに各市町村アンケートを通じて検討してきた。まず,給食の普及動向については,高知県は全国的には遅れた「学校給食後進県」であるが,2000年代に入って急速に給食の導入計画が相次いで立ち上がり,改善の兆しが見えつつある。しかし,最近の計画に共通する特徴は,センター建設と民間委託のセット方式である点に留意が必要である。センターの場合は,給食運営の合理化・集約化とともに,子どもと調理現場との距離の拡大や,臨機応変できめ細かな対応の難しさ,児童・生徒数の減少に伴う施設の過剰化という課題に直面している。また,民間委託は,行財政改革の一貫として各地で浸透を見せているが,その帰結は,県外大手資本による受託独占であり,地産地消や雇用,法人税収等,地域経済の面で大きな禍根を残すことになる。他にも,食材における地産地消率の一層の向上や,技能継承者としての調理の担い手確保策,給食無償化への取り組み等,本県では解決すべき多くの課題が依然残されている。その一方で,子どもの発達を目指した献立づくりや地元生産者と連携した食材調達等,食育や地産地消の面で現場では様々な工夫が繰り広げられていることも見えてきた。また,民間委託の中でも,民間給食資本委託型ではなく,地元団体委託型を通じて地域経済循環を意識化した新たなパターンも,分析を通じて明らかになった。食の安心・安全や食材調達,施設運営等,様々な課題を抱えているが,人間発達と地域形成という学校給食の2つの意義に立ち返りながら,今後も改革を進めていくことが期待される。今後は,大規模センター化・民間委託化の最前線である高知市の中学校給食計画や,それとは全く対照的な大川村における村外センター給食から村内給食への転換の行方等,検討課題が残されている。今後も引き続き県内の学校給食問題を追跡していくことを述べて,本稿を締めくくることにしたい。(謝辞)高知県教育委員会と各市町村教育委員会の学校給食担当の方々ならびに給食施設の責任者の方々には,今回貴重な時間を割いて私たちの調査にご協力いただきました。この場を借りて,御礼申し上げます。