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概要

kouchirouso_114_20180329

イギリス法独占放任の時代の営業の自由からBrexit 時代への競争法の展望 15(b) 少数意見の意義Sargant L. J. は,当事者の利益と公共の利益の点で,合理的であるかどうかを検討しており,協定の片務性および「互恵性」,ならびに非良心的,相手方である被告の協定の影響への理解力での「非対称性」,約因の弱さ,拘束される相手方への配慮に欠けているだけでなく自己の利益に偏重している点,原告らの保護のために必要とされる限度を超えている点,とりわけ長期の拘束によって,足かせを被告に課したことを挙げている。約因consideration は,コモン・ローにおいて,十分な対価が必要とされており,そのことは,等価関係でなければ契約は成立しないということである36。これらの諸点を考えるに,今日の再販拘束のみならず不公正な取引を考える際にも重要な意義を有している。またそれらにとどまらず,消費者法を考えるうえでも重要な意義を有している。そして,類似した事件が以前にもあって,その事件での考え方を適用する可能性があったのではないかと,反対したのである37。とりわけ,「互恵性」について言及したことは,後に再度取り上げる。また「非対称性」について,原審の判断とは異なり,『その協定のもつ十分な影響を理解してしまうことができる場合の被告であるとは思わない』,と既にこの時代に言及されてしまっているのである。既に筆者の先の研究で明らかにしたように,独占と支配を及ぼすような「営業の自由」が,「自由」であるはずがなく,独占と支配からの解放こそが,自由なのである。この事件は,後にイギリスの競争法制定立法に影響を与え,少数意見があるthose general principles. Of all the cases cited perhaps that of Joseph Evans & Co.v. Heathcote (1) has as great a similarity as any to the present case. But I refer tothat case only as containing a comparatively recent restatement in this Court of thegeneral principles with regard to restrictions of this kind, and not for the purpose ofdrawing any comparison between the facts there and the facts here” ([1928] 1 Ch.264, 280).36 なお,約因 consideration は,英米法の用語である。37 直接的には関係ないのであるが,イギリスの裁判は,裁判官が一人ひとり判決を述べる点で,裁判官の役割が公に発揮される側面がある。英語は,結論が先に来るが,判決は最後まで聞かなければわからないのである。