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概要

kouchirouso_114_20180329

イギリス法独占放任の時代の営業の自由からBrexit 時代への競争法の展望 21法は,資本の所有そのものからではなく,その効果から生ずる独占と支配の現象形態を絶対的に無効としなければ,法原理が貫徹しないのである。それは,既に述べたように,権利や自由に独占と支配の自由は含まれ得ないからである。ここではこれ以上,第2 次世界大戦後直後の制定法に触れることができないが,裁判所における独占放任は,Esso Case [1968]51まで,“cast-iron rule” が維持されたのである。しかしながら,そのEsso Case でも,これまでのイギリスが培ってきた営業制限の法理は,何らの断続性もなく,発展していったのである52。次に,イギリス競争法の独自性は,今後どのように進展していくのかを検討する。【退職記念号特別補足2 】先の第Ⅰ論文以外に,営業制限の法理と再販拘束について,次のような教授の研究成果などがある。Ⅱ横川和博「イギリスにおける営業制限の法理の展開と再販売価格維持規制」『明治大学大学院紀要』第20集, pp. 289-303(1982)Ⅲ横川和博「イギリスの「不公正な取引方法」規制  石油業界における排他条件付取引・抱き合わせ取引」『法律時報』56(4), pp. 103-110(日本評論社, 1984)Ⅳ横川和博「イギリスにおける独占規制と公共の利益」『経済法学会年報』6, pp.118-130(有斐閣, 1985-10)Ⅴ横川和博「英国における不当廉売・差別対価の規則と1980年競争法の性格」『高知論叢. 社会科学』44, pp. 57-91(高知大学経済学会, 1992-07-19)Ⅵ横川和博「英国における再販規正法の展開と書籍再販」『早稲田法学』76(3),pp. 187-208(2001)ここでは,第Ⅱ論文を見てみよう。いくつかの判例を検討し,再販に関する問題点を次のように指摘している。『第一には,事業者の自由の際限のない拡張がある。そして,それが他の者の自由の必然的な侵害につらなることが看過されている。第二には,事業者間の問題には裁判所は介入せずという,予定調和的な,楽天的な放任主義思想がある。これは,価格維持機構の積極的評価など商慣行への盲目的51 Esso Petroleum Co. Ltd. v. Harper’s Garage(Stourport), Ltd. [1968] A. C. 269. この事件は,5 年を超える石油の独占供給契約を無効とした事件。反対に,5 年未満は有効とした。52 その詳細は次の筆者論文参照。松田潤『所有と独占からの営業の自由の考察  英国法理を中心に,日本の営業の自由論争を検証  』(高知大学大学院総合自然科学研究科,2017-01)pp. 50-58。