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概要

kouchirouso_114_20180329

イギリス法独占放任の時代の営業の自由からBrexit 時代への競争法の展望 23というのも,第一に,『EU 競争法はEU 域内の市場統合を象徴する,最も強力で,かつ最もうまく機能している域内ルールの一つとみなされており,EU 政府内でもDG Competition(競争法当局)はきわめて強い発言権を持っている54』という現状からすれば,離脱後においても,指導的地位を確保するための競争法および政策を実行すると思われる。第二に,現行EU 加盟国の中でも,競争市場庁の積極性である。『特にカルテル分野では,イギリス当局はEU 当局よりも積極的だという印象が強い。たとえば,必ずしも協調行為を直接的に意図したとは限らない純粋な情報交換だけしか問題行為がないような事例に対して制裁金を課すことに,イギリス当局はあまり躊躇を感じていないようである55』。『イギリスのみならず,EU その他の当局が,いわゆる「新手のカルテル」に捜査の対象を広げつつある中で,EU 当局の捜査案件では,まだまだ純粋に新しいカテゴリーを立件することに躊躇があるように見られるが,この点イギリス当局は,EU よりも一歩踏み込んだ運用をしているというのが特徴だろう56』,といった積極性も今後より顕著になるのではなかろうか57。第三に,国際的およびヨーロッパでの地位を国家戦略としては,イギリス政府および競争市場庁が,離脱による地位の低下の危険を回避して,あらゆる活動によって指導的地位に立つよう,活動すると思われるのである。さらに,二大競争法であるアメリカ競争法およびEU 競争法に後れをとるような消極的態度では,帝国主義であるイギリスの覇権が崩壊する恐れがあるからである58。54 山田香織「競争法分野における影響と今後の方向性」『NBL』1079(商事法務, 2016. 8.1)p. 38。55 Ib. p. 39。56 Ib. p. 40。57 イギリスにおける競争法違反の損害賠償請求の積極性は,次を参照。樋口陽介「英国のEU 離脱と競争法。両者の法律関係がいかなるものになるかを整理しておくことは有用(特集 イギリスのEU離脱がビジネス法務に与える影響)」『The Lawyers』13(9)(アイ・エル・エス出版, 2016. 9)p. 43, p. 45; p. 47。大髙友一「英国における消費者保護法制とEU 離脱による影響」『NBL』1079(商事法務, 2016. 8. 1)p. 32, pp. 36-37。58 例えば, 競争法の私的執行について,クーン・プラトーほか「Brexit が欧州競争法に及ぼす影響」『ビジネス法務』17(11)(中央経済社グループパブリッシング, 2017-11)p. 124。