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概要

kouchirouso_114_20180329

31 論 説ポスト人口転換期の条件不利地域問題   東アジアの基本構図   飯  國  芳  明1.老いるアジア1990年代の東アジア及び東南アジアの国々は,その目覚ましい経済成長によって世界的な注目を浴びてきた。世界銀行(1994)はこれを「東アジア」の奇跡と呼び,その先頭に位置した日本の経済をVogel(1979)はJapan asNumber One と称賛し,日本の制度はアメリカにとっての「最良の鏡」と位置づけた。しかし,今世紀に入ると大泉(2007)『老いてゆくアジア』,小峰(2007)『超長期予測老いるアジア』などが相次いで発刊され,評価の凋落ぶりは著しい。これらの著者は人口構造の大きな変化にその原因を求めている点で共通している。高度成長期を支えた労働人口が高齢化するとともに,その家庭が豊かになると次世代は子供の数を減らす。少子化の到来である。この結果,働く人が減り,その収入に依存する人口が増える。この段階に入ると,高齢者のための社会保障費が増大して財政負担は増大を続ける。他方,高齢化による預貯金額の減少は労働力や投資を減少させて経済成長は望めなくなる。決して明るいとは言えないこの議論は,人口オーナス論として知られている。人口オーナス論の主たる関心は経済成長の停滞や財政逼迫などの国家レベルの問題に向けられてきた1。また,この問題は日本に続いて東アジアで急速な経高知論叢(社会科学)第114号 2018年3 月1 小峰(2016)は人口オーナス期に地域格差が拡大する点を指摘している。また, 大泉(2007,2011)は,人口ボーナスからオーナスへの転換が都市と地方で異なる展開をみせ