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概要

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36 高知論叢 第114号傾向にあり,死亡率はそれを上回る速度で低下する。さらに,グループC のグループは出生率,死亡率ともコントロールができておらず,いずれの率も低下していない国々とされる(Thompson 1929)。グループA にはイングランド,フランス,ドイツなどが含まれ,B にはスペインやイタリア,Cにはロシア,日本,インドなどが含まれる。Davis(1945)人口の転換が死亡率の低下とそれに続く出生率の低下の過程からなることを示す。また,死亡率低下は農業や工業の技術革新,交通手段の発達や衛生環境の改善によるものであり,出生率の低下は生活の近代化や都市化によってもたらされることを指摘している。また,同年の1945年の論文でNotestein(1945)は,Thompson の人口類型を順序づけて,明確な段階論を提示した。すなわち,incipient decline(初期人口減少期),transitional growth(人口転換期),high growth potential(人口増加潜在期)の3つである。最初の類型は,出生率の減少が著しくて人口補完水準を下回るかそれに近い水準の国々が分類される。西欧の各国や北アメリカ,オーストラリアなどが属する。2つ目の類型は出生率,死亡率とも高い水準にあるものの出生率の低下が始まている国々であり,東欧,ソビエト連邦,日本などが含まれる。さらに,3つ目の類型は転換が始まる前の段階にあり,出生率は高い水準にある。ソビエト連邦と日本を除くアジア各国や中央アフリカなどが含まれる3。Notestein の分析には人口転換論の基本的要素が備わっており,論理の骨格がここに調ったとみることができる。初期の人口転換論で注目されるのは,その分析の目的である。Thompsonの分析は世界大戦間期に行われており,彼の言うグループC の国々の人口爆発を受け止める土地がなく,これらの国々はグループA のように植民地によってこの問題を緩和するすべがない。その点を重くみたThompson は土地の再配分をめぐる対立が戦争を引き起こすと予言している。また,Notestein(1945) やDavis (1945) の分析は第2次世界大戦直後のものであり,途上国に3 類型の性格づけは Notestein 1945, 41頁に詳しい。Notestein はイギリスと日本の出生率及び死亡率を詳しく比較して,日本の過程がイギリスのそれにおよそ40年遅れていることを明らかにしている点も注目される。