ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

kouchirouso_114_20180329

ポスト人口転換期の条件不利地域問題 41分析ではBloom et al. が提案する基準すなわち,生産年齢人口の増加が総人口のそれを上回る期間を採用する。この指標は生産年齢人口率が増加している期間と言い換えることもできる(Bloom et al. 1997,17頁)。3)人口オーナス論人口オーナス期は人口ボーナス期に続く。人口オーナスとは,人口ボーナス期に増大した生産年齢人口の高齢化と出生率の低下により生産年齢人口率が低下する現象を指す(小峰 2007,Komine et al. 2009)。人口転換の枠組みに従えば,人口ボーナス期に増大した生産年齢人口の高齢化は必然である。また,出生率は低下を続けてはやがて死亡率の水準に達するとすれば移民などの国境を越えた人口移動を考えない限り,人口ボーナスは一時的なものであり,その後の人口オーナスの到来も避けられないとされる。これまで人口オーナスをめぐる議論では,大きく2つの問題が懸念されてきた。すなわち,経済成長の停滞であり,社会福祉負担の増大である。前者については,人口ボーナス論で展開した経済成長の過程を逆向きに考えればよい。生産年齢人口率の低下は,労働供給,貯蓄率(投資)を減退させて経済成長にマイナスの効果を及ぼす。また,出生率の大幅な上昇がない限り,高齢者率は上昇を続ける。このため,高齢者のための社会負担は増加して,やがては低成長の経済では「賄いきれない」水準に達する(大泉 2007)。これが後者の社会福祉負担の問題である。人口オーナス問題は,日本だけに留まる問題ではない。東アジアで共通に発現しうる社会的な病理である。人口ボーナス論と同様にアジア諸国を射程におく国際的な比較分析も盛んに進められている(大泉 2007,小峰 2007,Komineet al 2009,Oizumi 2011,Chomik et al. 2015)。ちなみに,人口オーナスという用語は,小峰の造語である。オーナス(重荷)はボーナスと対をなす言葉であることからこの命名がなされたという(小峰上昇に転じた時点とし,終点をそれが低下に向かった時点とする。また,後者では,始点を生産年齢人口が50% を上回った時点とし, 終点を下回った時点とする(大泉 2012,25頁)。このほか,生産年齢人口が従属人口の2倍以上という基準なども提示されている。