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概要

kouchirouso_114_20180329

我が国における中小企業法に関する一小論 61第二の視点は,いわゆる「系列化」の問題である。中小企業は,多くの場合,大企業の系列という組織のなかに存在する。ここにおいて,大企業による中小企業に対する行為が独占禁止法違反にならないか,独占禁止法における不公正な取引方法該当性の問題となる。第三は,中小企業の「過当競争」と言われるものの独占禁止法の求める競争論からの評価の問題である。本章では,これらの課題の内から,系列化の問題において中小企業と独占禁止法制の関わりを検討しようと考える。(1)いわゆる系列化と中小企業……流通系列(販売系列)独占禁止法の不公正な取引方法の中心的な規定として「優越的地位の濫用」規制がある。この規定は,欧米の独占禁止法制には見られない,我が国の独占禁止法の特徴とも言うべき規定である。資本主義経済においては,様々な企業が活動し,それらには経済力の強大な企業から小規模零細企業まで含まれる。それらは当然のこととしてそれぞれの地位の上下(交渉力の強弱)が存在する。独占禁止法は,そうした格差の存在自体を完全に解消できるものではないが,かかる格差を背景とした地位の濫用行為を規制するのである。我が国の独占禁止法が,中心的規定として優越的地位の濫用行為を規制するのは,我が国の経済社会においてかかる行為が,頻繁に,商慣行として,当たり前のように行われていることの証左である。立場の強いものによる弱いものへの濫用行為は,主として以下の4つの面で現れる。第一は,金融系列。金融機関による系列化の問題である。第二は,流通系列。大企業の販売経路の系列化の問題である。第三は,下請系列。製造業における生産系列である。第四には,消費者に対する濫用行為2である。2 このことと関連して,独占禁止法を補完する法律として「不当景品類及び不当表示防止法」がある。これは,昭和30年代における有名な「偽牛缶事件」を契機として,消費者の弱者性(判断力・情報力の不足)につけ込む行為を規制することにより,独占禁止法の補完的な法律となっていた。その後,消費者庁の設立により,同法の所管は公正取引委員会から同庁に移されたが,現在でも同法の運用には公正取引委員会が一定の役割