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概要

kouchirouso_114_20180329

62 高知論叢 第114号ここでは,中小企業との関わりの深い流通系列と下請系列について,本節 と次節において論ずることとする。流通系列と独占禁止法との関わりの議論は,主として,独占禁止法の規制する不公正な取引方法の該当性如何の問題として現れる。系列化を行う有力企業(多くは全国規模の大企業である)による系列化が,不公正な取引方法の,拘束条件付取引,再販売価格維持行為,排他条件付取引,抱合わせ取引等に該当するか,ひいては,優越的地位の濫用にあたらないかという問題である。このことを論ずるためには,不公正な取引方法規制の求める「公正な」競争とはいかなるものかということが明らかにされなければならない3。第一の説は,不公正な取引方法の要件である競争阻害性は,市場全体における競争への影響の如何によって決まるとする。したがって,系列の中でどのようなことが起きているかというより,系列化が市場全体に及ぼす影響の度合いが重要なメルクマールとされる。第二の説は,系列を構成する個々の法主体(各企業)がいかなる影響を受けるかに着目する。個々の法主体の競争機能(より広い表現をすれば中小企業の経済的自由)が発揮されているかどうかということをメルクマールとする。第一の説によれば,系列を構成する企業のなかで競争機能を制限されていたとしても,いくつかの系列間で活発に競争が行われていれば,独占禁止法上,適法なものとなるが,第二の説では,かかる競争は独占禁止法上,評価に値しないこととなるのである。公正取引委員会の運用あるいは通説的見解は,この両説を「有機的に組み合わせる」ものとしているが,果たして系列化の議論においてそれが望ましい立場であろうか。筆者は,系列化の議論においては,系列を構成する法主体の競争機能に着目する第二の説を中心に考えるべきものと考える4。それは,本稿の課題と密接にを果たしている。3 拙著『企業系列と法』(現代経済法講座)三省堂,1990年5月182頁4 拙著『企業系列と法』(現代経済法講座)三省堂,1990年5月188頁筆者が,これを書いたときには,系列を構成する中小企業の視点を重要視した。「独占禁止法は中小企業保護法ではない」という批判と「この説に従ったら中小企業はつぶれ