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概要

kouchirouso_114_20180329

我が国における中小企業法に関する一小論 63関わるのであるが,系列を構成するのは,その多くが中小企業であるからである。中小企業が競争機能を発揮できない,いいかえれば経済的自由を制限された状態で,大企業が活発に競争を行っていれば望ましい市場の状態であるとは言えない。これを,後述する地域の中小企業という視点で論ずれば,系列化の進行した経済の状態というのは,系列化の主体となる大企業が存在しない地方の経済社会は「競争機能を制限された企業」あるいは「経済的自由を束縛された企業」によって構成される経済社会であるということになる。本稿の視点からは,これを望ましいものとは言えない。(2) 流通系列補論……英国における流通系列との比較本節では,我が国の流通系列を,英国におけるそれと比較することで,我が国の流通系列のみならず我が国の経済法制,中小企業法制を論ずる一助としたい。筆者の英国においての調査研究の中心となったのは,ガソリン及びビール業界の調査研究であった5。ビール業界の研究は実におもしろい。我々が何気なく口にしているビールの味や価格がどのようにして決まるか,パブやビアホールにおけるビールの種類や価格,販売方法がどのようにして決まるか,というまさに生活に関わることであるからである。英国において,独占禁止法の運用基準を決めていく独占委員会は,かつてビールメーカーによるパブの系列化を公益に反するものと判断した6。大手ビールメーカーは反発し,すべてのCM に「OUR PUBS ARE INDAGER. OPPOSE THE MONOPOLY COMMISSION’S REPORT」という文字を入れて反発したのである。しかしながら,かかる系列化規制は実行された。それは,系列化に対する拒否感がパブの間に根強かったこと,その背景にあるてしまう」という批判をいただいたが,ここでは触れない。ただ,後者の批判のほうが的を射ていると感じた。中小企業に競争機能を発揮せよ,というのは後述する中小企業立法の流れからは,厳しいものとなるからである。5 拙稿「イギリスの『不公正な取引方法』規制 石油業界における排他条件付取引・抱き合わせ取引」法律時報56巻4号,「英国のビール業界における系列化」公正取引469号6 拙稿,前掲公正取引。