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概要

kouchirouso_114_20180329

我が国における中小企業法に関する一小論 65定されたものである。我が国の独占禁止法の「母法」であるアメリカのAnti-Trust Laws にはありえない法律であり,我が国の経済における封建社会の残滓にたいする対応であり,独占禁止法制とは異質のものとも評されたが,現在では公正取引委員会の活動の主要な柱の一つとなっている。主要な内容を見てみよう10。同法は,書面交付義務(3条),書面保存義務(5条)を定めるとともに,禁止される行為を具体的に列挙している。まず,書面交付義務・書面保存義務の規定である。この規定は,海外の研究者と議論するときに必ず苦笑とともに受け止められる。いやしくも,先進国,法治国家であるならば,取引するとき何の書面も作成しないということはありえない,というのが彼らの感覚である。ところが,何の書面も作成せずかなり高額な発注をするというのが下請取引の実態であった。口頭,あるいは電話での発注はあとでさまざまな「行き違い」(ときには意図的な)が生ずる。それについて争うことはない,というのが下請関係の性格を如実に示しているのである。この規定の実効性はあったのか。最近のヒヤリングにおいて聞いたところでは,発注が電話ではなくメールが多くなったので少なくともメールという「文書」は残る,ということであった(メールが「文書」であるかどうかについては争いがある)。禁止される行為についてみていこう。① 不当な受領拒否発注された部品を納入しようとして断られる場合。発注が発注者側のミスであったとしても,受領を拒否されたら持ち帰るしかない。② 下請代金の支払い遅延これは常態化していたため法の名称となった。下請中小企業は資金繰りが厳しいところが多いため代金の支払遅延は死活問題である。不当に長期にわたる手形サイトも規制される。コックシステムも支払い遅延と言えよう。コック10 同法の要点及び運用実態については,拙著『演習ノート経済法』(第二版)106頁