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概要

kouchirouso_114_20180329

我が国における中小企業法に関する一小論 69がれ,後述するように,我が国の中小企業政策と法の一つの特徴となっていくのである。戦前の経済法制のもう一つの特徴は,これも迷うことなくカルテル立法(カルテルを組織させるための立法)が行われていることである13。我が国におけるカルテル組織は,はやくも1880年(明治13年)設立の「製紙所連合会」に見られるが,カルテル立法としては,1925年(大正14年)の重要輸出品工業組合法,輸出組合法が嚆矢であろう14。これらの法によって生産統制,販売統制が行政指導によって行われていくことになる。とくにこれらは世界で最初の「アウトサイダー規制」のための法律として位置づけられる。以上から言えることは,我が国の戦前の経済法においては中小企業の自主性を育成する余地がほとんどなかったということである。(2)戦後民主化と独占禁止法制の成立1945年の敗戦を機に,我が国は民主化のためのいわゆる戦後改革に取り組むことになる。その中心の一つとなる経済改革の成果を将来に向けて恒久的に維持するために制定されたのが独占禁止法であり,同法によって我が国経済は基本的には市場における公正かつ自由な競争によって維持されることとなる。1947年に独占禁止法制定後,中小企業は市場における公正かつ自由な競争の主体として位置づけられた。同法は,制定後,主な改正だけを見ても昭和24年,28年,52年,平成元年,17年,21年,25年と変遷してきた。制定当時の独占禁止法(原始独占禁止法と言われる)は世界に類例を見ないほど厳格な規制を定めていたが,24年改正法は,米国とソビエト連邦との対立を背景に米国資本の日本進出(その当時言われた「日本の浮沈空母化」)のために独占禁止法を緩和しようというものであり,28年改正法は,独占禁止法制を全く理解しない当時の保守政党が同法を事実上の廃法に持ち込みたいとするものであった。しかしながら,それ以降の改正は一部の規定をのぞき同法の強化改正という性格を有13 同35頁以下。14 我が国におけるカルテル法制の展開については,木元錦哉「カルテル制度とその運用(1)~(13)」物価資料1982. 7~1983. 7